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ヘーベルハウスが売れない…突然に販売不振突入、「マンション全棟建替」地獄に業界が震撼

文=編集部
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ヘーベルハウスが売れない…突然に販売不振突入、「マンション全棟建替」地獄に業界が震撼の画像1旭化成本社が所在する神保町三井ビルディング(「Wikipedia」より)

 住宅メーカー大手7社の2016年4月の受注額(速報値)によると「ヘーベルハウス」で知られる旭化成ホームズは戸建てとアパートを合わせた受注額が前年同月比12%減だった。落ち込みが大きかったアパートが回復せず、6カ月連続の2ケタ減となった。

 大手の戸建て注文住宅の15年度(15年4月~16年3月)の受注額はまずまずの水準。大和ハウス工業は5%増加し、住友林業とミサワホームがいずれも3%増。パナホームも2%アップした。積水ハウス(15年2月~16年1月)は前年度と同水準。三井ホームは1%減である。

 グループ企業が杭打ちデータを改竄していた旭化成ホームズは、戸建てとアパートの合計で7%減。旭化成ホームズの1人負けが際立った。

 横浜市都筑区のマンションで旭化成建材が杭打ちデータを改竄した問題は15年10月に明るみに出た。11月以降、旭化成ホームズの月次の受注額は大幅な前年割れが続く。販売現場は釈明に追われ、親会社の旭化成はグループ全体で広告宣伝を自粛。今春から再開したものの、新年度のスタートとなった4月の受注額は2ケタ減となっている。

 杭打ち問題による旭化成ブランドの毀損がどこまで影響するかは、まったく読み切れていない。

全棟建て替えという恐怖

 マンションの施工が不完全であることが発覚した場合、「全棟建て替え」となる恐怖がマンション業者とゼネコン業界を襲った。

 全棟建て替えの先鞭をつけたのは、15年10月に杭打ちデータの偽装が発覚した三井不動産レジデンシャルの傾斜マンションだ。全4棟の建て替えなど、手厚い補償案を住民側へ提示し、16年2月に住民側も建て替えに同意した。

 横浜市都筑区のマンションは販売元が三井不動産レジデンシャル、元請けが三井住友建設、1次下請けが日立ハイテクノロジーズ、2次下請けが旭化成建材だった。杭打ちデータを改竄した責任をめぐって、三井住友建設と旭化成建材が対立している。建て替え費用の負担をどう配分するかは決まっていない。

 一方、住友不動産が販売元の横浜市西区のマンションでも、14年6月に全5棟のうち4棟で支持層と呼ばれる固い地盤に杭が届いていないことが判明した。1棟は傾斜していて危険なため住民は退去済み。住友不動産と、施工した熊谷組は1棟を建て替え、残り3棟には補修工事を施す方向で住民と協議を進めていた。

 ところが、三井不動産レジデンシャルの全棟建て替えが決まったことから、住友不動産に対して全棟建て替えを求める声が上がった。このため、結局、全5棟の建て替えをすることになった。

 全棟建て替えの影響は、関連企業の決算にどう影を落としたのか。

旭化成、14億円の特別損失

 旭化成の16年3月期の連結決算にどう影を落としたのか検証してみた。純利益は前期比13%減の917億円にとどまった。

 減益は3期ぶりのこと。マンション杭打ちデータの改竄問題では調査費用として14億円の特別損失を計上した。

 売上高は2%減の1兆9409億円。年度後半の石油化学製品の価格下落が響いた。営業利益は5%増の1652億円と3期連続で最高益を更新した。

 杭打ち問題は、拍子抜けするほど決算に影響を与えなかった。問題の建材事業の売上高は5%減の494億円、営業利益は41%増の58億円。住宅事業は「ヘーベルハウス」の引き渡し戸数が増えたことから、売上高は6%増の5830億円、営業利益は10%増の654億円だった。

 しかし、問題発覚後、「ヘーベルハウス」の受注が落ち込んでいる。これが決算の売り上げ減として顕在化するのは1年後だ。

 だから、杭打ち問題が決算に反映してくるのは17年3月期以降になる。17年3月期は売上高が前期比2%減の1兆9100億円、純利益は微増の920億円と見込んでいるが、これには横浜市の傾斜マンションの補償などの費用は織り込まれていない。三井不動産レジデンシャルの親会社である三井不動産との費用の分担交渉に時間がかかる見通しだからだ。

 マンション建て替え問題は、旭化成にとって“のどに刺さった骨”であり続ける。

特別損失、三井住友建設は21億円、熊谷組は97億円

 三井不動産の16年3月期の純利益は前期比18%増の1177億円と過去最高だった。17年3月期は6%の増益を見込むが、横浜市の傾斜マンションの関連費用は、まったく盛り込んでいない。

 三井不動産は元請けの三井住友建設、1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、2次下請けの旭化成建材と費用負担の協議に入るが、長期化するのは必至。全棟建て替えによる住民の仮住まい費用を含めると、総額は数百億円規模になる。

 三井住友建設は16年3月期の連結決算で21億円の特別損失を計上した。横浜市のマンション杭工事問題の対策費用として最低限必要とされる金額を見込んだ。工事量が増えたことから純利益は99億円と前期比42%増えた。

 傾斜マンションの対策費用を特別損失として一部を計上したのは旭化成と三井住友建設の2社にとどまる。三井不動産レジデンシャルと日立ハイテクノロジーズは費用負担の協議の結果待ちだ。

 他方、住友不動産が販売し、熊谷組が施工した横浜市西区の傾斜マンションについて、熊谷組は16年3月期に特別損失97億円を計上した。施工不良が見つかった横浜市のマンションの全棟建て替えが決まり、建て替えや住民の仮住まいの費用などを偶発損失引当金として追加計上した。施工不良に伴う損失は15年3月期の73億円、16年3月期の97億円で、合わせて170億円に上る。

 解体から新しいマンションの完成まで3年かかるという。今後も損失引当金が増加することになる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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