日本だけで6000万人以上のユーザーを抱え、コミュニケーションアプリとしてはダントツのシェアを誇る「LINE」。プライベートのみならず、社員同士の業務連絡ツールとして利用する企業も増えている。
しかし、それに伴い、最近多発しているのが「LINEパワハラ」だ。昼夜を問わず部署ごとのグループで送られてくる業務命令、複数の社員がログを見ているなかで上司からの罵倒……など、パワーハラスメントまがいのトラブルが後を絶たない。こうした事例は、どこからパワハラに該当するのだろうか。オフィスADR代表で特定社会保険労務士の今中良輔氏に聞いた。
深夜3時に連絡、グループ内で個人攻撃、強制退会…
今中氏によると、パワハラに該当する行為は厚生労働省によって細かく定義されているという。
「例えば、暴行や傷害などの身体的攻撃や、仲間外れや無視などの精神的攻撃です。LINEによって発生するパワハラは、おそらく後者の精神的攻撃に含まれると思います」(今中氏)
具体的な事例を基に、どこからがパワハラとなるのか見てみよう。
【実例1 早朝深夜かまわずに仕事の連絡が来る】
上司からのLINEが昼夜を問わず、ひっきりなしに来る。午前3時や4時にメッセージが来て、返信が遅いと小言や嫌みを言われる。
「業務時間外にLINEを送ること自体は、送信の回数が業務の適正な範囲を超えなければ、パワハラとはいえないと思います。対策としては、面倒ですが、業務時間外になったらLINEの通知をオフにするしかありません。オン・オフの切り替えをして、コントロールするしかないと思われます」(同)
【実例2 グループ内で上司から罵倒される】
十数人の同僚が見ているLINEグループで、上司が個人名を挙げて怒ったり、説教したりする。罵倒されることもある。
「グループ内での個人に対する業務上の指導が、業務の適正な範囲を超えているかどうかが問題となります。個人のミスを共有し、同様のミスを防ぐという趣旨であれば、一概にパワハラとはいえません。
しかし、指導内容そのものが業務の適正な範囲を超え、『バカ』など個人の人格を否定するようなものであれば、名誉毀損や暴言などに該当します。その場合はパワハラになると思われます」(同)