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ベネッセ、深刻な会員減で格下げの追い打ち&債務不履行リスク増…起死回生の一大計画始動

文=牧瀬良/フリージャーナリスト
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ベネッセ、深刻な会員減で格下げの追い打ち&債務不履行リスク増…起死回生の一大計画始動の画像1ベネッセの通信教育講座「進研ゼミ」からダイレクトメールで送られてくる宣伝漫画(「Wikipedia」より/Amayus)

 通信教育最大手、ベネッセホールディングス(HD)の長期発行体格付けが「ダブルAマイナス」から「シングルAプラス」に一段引き下げられた。日本格付研究所(JCR)が発表した。長期発行体格付けは、債務者(発行体)の債務全体を包括的に捉え、その債務履行能力を比較できるように等級で示される。

 つまり、ベネッセHDの信用格付けが、同社の債務について約定通り履行される確実性が後退したと判断されたのだ。具体的には、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」など国内通信教育講座の会員減に歯止めがかからず、業績改善が見込めないとして格下げになった。

 ベネッセHDをめぐっては、2014年7月に顧客情報の漏洩が発覚し、会員が大量に退会した。その余波は続き、今年4月時点の進研ゼミの会員数は243万人と前年同月比で28万人も減った。情報漏洩は、システム開発・運用を手がけるグループ会社シンフォームの業務委託先元社員が顧客情報を不正に持ち出し、名簿業者に売却したというものだった。その数は約2895万件にも上った。元社員は、不正競争防止法違反の容疑で警視庁に逮捕された。

 この情報漏洩事件の影響は大きく、16年3月期の連結決算は減収減益を余儀なくされ、2期連続の最終赤字となった。日本マクドナルドホールディングス会長兼社長などを歴任し、手腕が期待された原田泳幸会長兼社長はその責任を取り6月に退任している。会員減を受けてベネッセHDは、進研ゼミを刷新しタブレット端末などを活用する「進研ゼミ+(プラス)」を打ち出したほか、会員の流出を止めるために自粛していたテレビのCMやダイレクトメールを再開している。

 こうした施策にもかかわらず、17年3月期の売上高は前期比1.2%減の4388億円、営業利益は31%減の75億円という見通し。業績回復には国内通信教育事業の抜本的な改革が必要だろう。

学習塾事業強化に舵切り

 JCRは、「国内通信教育の会員数の動向が格付け上のポイントになる」として、格付けの見通しも「ネガティブ」を継続した。ネガティブとは、「今後、格下げの方向で見直される可能性が高い」という評価。要するに、国内通信教育の収益回復が現状では不透明であり、改善が見られなければ一段の格下げもあり得るということなのだ。格下げは当然、株価下落の要因ともなる。

 とはいえ、中国など海外の通信教育事業が好調なことに加えて、国内の学校向け教育事業も順調だ。塾事業でも、進研ゼミ+の教材を使った個別指導塾のフランチャイズチェーン(FC)展開に本格的に乗り出している。買収にも意欲的で、これまで東京個別指導学院や大学進学予備校のお茶の水ゼミナール、関西地盤のアップ、さらには東京大学への抜群の合格実績を誇る鉄緑会運営の東京教育研を次々に傘下に収めてきた。

 鉄緑会は、「日本屈指の進学校に通う秀才を集め、さらに鍛え、確実に最難関大学に合格させる塾」(『ルポ塾歴社会』<おおたとしまさ著/幻冬舎新書>より)である。「特に注目に値するのは、東大理3【註:正式表記はローマ数字】(医学部)の定員に占める鉄緑会出身者の占有率。日本における最難関、受験競争のヒエラルキーの最上位のなんと6割以上が、鉄緑会出身者で占められている」(同)というから、この塾の凄さがわかるだろう。  

 鉄緑会には東京本校と大阪校の2つの拠点があり、そのテキストは東大の入試問題を徹底的に研究し尽くしてできた賜物。この「東大合格に特化した門外不出のノウハウ」を、インターネット回線を活用した授業で展開するプロジェクトが現在始動しているという。「全国区に広めてしまえば、ブランド力の低下を招きかねない」との指摘もあるが、裏を返せば鉄緑会の図抜けた実力を物語るプロジェクトであるのはいうまでもない。

 この鉄緑会がベネッセHDの子会社になったのが09年。関西圏で小中高一貫の学習塾を手がけるアップを子会社化したのは12年3月。それ以降は目立った動きもなく、もっぱらベネッセは塾業界に対する関心が薄れているとの評だった。

 それが一転した。ここへ来て個別指導塾のFC展開に乗り出すなど、塾事業の強化に再び舵を切っているからだ。

「このベネッセの動きが、業界再編の呼び水となる可能性もある」(業界関係者)

 業績回復のカギは、塾事業が握っているのかもしれない。
(文=牧瀬良/フリージャーナリスト)

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