マツダが1トン・ピックアップトラックの自社開発・生産から撤退し、いすず自動車【編注:「ず」の正式表記は踊り字】からのOEM(相手先ブランドによる生産)供給車に切り替えることを決めた。経営資源をグローバルで需要拡大が見込まれるSUVに集約するためだ。
一方で、2015年5月に業務提携することで合意したトヨタ自動車からではなく、あえていすずからの調達に決めたことで、「マツダとトヨタとの提携話が一向に進んでいない」実状が浮き彫りになった。さらに7月22日には、米ゼネラルモーターズ(GM)がいすずと次期ピックアップトラックの共同開発を取りやめることを決定。いすずとマツダの新たな提携は、自動車業界の提携に微妙な影を落としている。
1トン・ピックアップトラックは、タイ、インドネシアなどのアジア新興国や、中近東などで根強い需要がある。日系自動車メーカーやGM、米フォードなどは、最大のピックアップトラック市場であるタイで集中生産して各市場に輸出している。
そのタイでマツダは、フォードと折半出資の合弁会社オートアライアンス・タイランド(AAT)でピックアップトラック「BT-50」や乗用車を生産している。AATのマツダ分の生産能力は14万台。タイの新車市場全体は景気の悪化などで低調に推移しているなか、「マツダ3」(アクセラ)や「CX-3」などの販売が好調に推移し、AATのマツダ車生産ラインはフル稼働状態にある。
マツダの2016年上期(1-6月)のタイでの販売を見ると、ピックアップであるBT-50が前年同期比23.5%減の約3200台と不振だったが、「CX」シリーズのSUV系は同2.6倍の約4500台と急増、SUV系がピックアップの販売台数を上回った。こうした傾向は他市場でも同様で、先進国を含めて自動車市場はSUV系の人気が高まっている。
マツダがタイで生産するピックアップトラックは年間4~5万台程度。マツダはピックアップトラック市場の今後の成長には限界があると判断、数年後に自社開発と生産から撤退して、その分、好調なSUVと乗用車に振り分けることにした。
マツダは、自社ブランドのピックアップトラックの販売を継続するため、いすずがタイで生産する「D-MAX」の次世代モデルのOEM供給を受けて、タイや豪州、南アフリカなど、グローバルな市場で販売することで合意した。