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瀕死のパチンコ業界、トドメの3大制度改悪が波紋…露骨な業界利益優先でユーザー犠牲に

文=黒木カブ/ライター
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瀕死のパチンコ業界、トドメの3大制度改悪が波紋…露骨な業界利益優先でユーザー犠牲にの画像1パチンコ玉(「Wikipedia」より/MichaelMaggs)

 パチンコ業界が冷えきっている。1995年には参加人口約3000万人、売上高約31兆円の巨大産業だったが、「レジャー白書2016」(公益財団法人 日本生産性本部)によると、今や参加人口はピーク時の約3分の1となる1070万人に減少。市場規模も過去最低水準に低迷している。

 その理由として、景気の停滞や若者のギャンブル離れ、パチンコ依存症の社会問題化など、さまざまな要因が指摘されているが、なかでも業界関係者が口を揃えるのは「パチンコそのものに魅力がなくなった」こと。ギャンブルとして「勝ちにくくなった」ことがファン離れを加速させ、それによって市場がシュリンクしていくという負のスパイラルに陥っている。

 しかも、離れたユーザーを取り戻したり新規のファンを増やしたりする努力も見えない。業界全体が衰退傾向にある場合、一般の企業ならさまざまな施策を考えていくのが定石だが、パチンコ業界はまったく逆。むしろ、さらにユーザー離れを引き起こすような規制強化や改悪が、同時期に3つも行われているのだ。

等価交換禁止で逆にパチンコ依存に?

 そのひとつが「等価交換の禁止」だ。以前なら、ホールによって異なるが、1発4円で借りた玉を4円で換金する「等価交換」が認められていた。

 しかし、換金率の規定は各都道府県の遊技業協同組合が決めており、東京都は昨年11月に等価交換を全面禁止。神奈川、埼玉などの関東近県にはまだ等価交換のホールもあるが、将来的には全都道府県で禁止になるといわれている。

 なぜ、等価交換が禁止されるのだろうか。この施策の目的は、建前上、ギャンブル性を低くすることでユーザーがより長く楽しめるとして、パチンコの「健全化」の一環とされている。ところが、その実態は「単なるホール側の利益確保でしかない」(パチンコ業界に詳しいジャーナリスト)という。

「それまで4円だった換金率を3円に下げれば、ホールの利益は1玉につき1円増えることになります。その分の利益を客に還元し、出玉をよくするなら話はわかりますが、そんなユーザーに優しいホールなど、どこにもないのが現状です」(同)

 もちろん、「健全化」という金看板も同様だ。等価交換を禁止したため、逆にパチンコへの依存度が高まっているのが実態だという。

「換金して差玉分をホールに取られるぐらいなら、大当たりしてもそのまま打ち続けるか、貯玉して再プレイするほうがいい。つまり、等価交換を禁止したことにより、ダラダラと1日中パチンコを打ち続けている人間を大量に生み出すことになってしまったわけです」(同)

マックス機撤廃で大勝ちはほぼ不可能に!

 そして、次に、これもギャンブル性を低く抑える「健全化」の名目で行われたのが「マックス機」の撤廃である。

 マックス機とは、大当たり確率を下限の400分の1程度にし、その分だけ出玉を多く獲得できるタイプのパチンコ機のこと。しかし、パチンコ機器メーカーで構成される日本遊技機工業組合(以下、日工組)は、「内規」を変更してマックス機の規制に乗り出したのだ。そのため、年内にはホールからマックス機が撤去されることになった。

「日工組の新しい内規は『大当たり確率320分の1以上』『確変継続率65%以下』という、一昔前の『海物語』のようなスペック。パチンコ専門誌では『それでも波に乗れば3万発も可能!』などと煽っていますが、この確率では大勝ちするのはなかなか難しいでしょう」と話すのは、パチンコ雑誌の編集者だ。

 しかも、パチンコ業界は今後、「当たりは出やすいが、出玉は少ない」というギャンブル性の低い機種をどんどん売り込んでいきたいらしく、さらにマイルドな「ちょいパチ」というカテゴリまでつくり出した。

「『ちょいパチ』は、大当たり確率が29~40分の1ぐらい。確かに当たりやすいのですが、出玉が200個程度なので、一箱分出すまでに何時間もかかってしまう。機種も旧作のリメイクばかりで、こんなものにお金と時間をかけて打つのは、よほどのヒマ人ぐらいしかいませんよ」(同)

違法台回収の費用はユーザー側が負担?

 そしてもうひとつ、極めつけといえるのが「違法釘問題」だ。これまで市場に出回っていたパチンコ台のほとんどは、検定時とは異なる「釘調整」がされていた。それをパチンコの監督官庁である警察庁が問題視し、「違法に不正改造された台」として撤去・回収するように命じたのである。

 前出のジャーナリストは、「これこそ本音と建前がねじ曲がっていますよ」とあきれ顔で話す。

「釘を触ってはいけないとされていますが、現実に釘調整は行われているし、それを基に大当たり確率が計算され、ファンもその事実を承知している。ホールも釘調整によって『出す』『出さない』を調整しているんです。それを、警察が今さら取り締まるのは、ナンセンスとしかいいようがありません」(同)

 実は、この違法釘問題はパチンコ雑誌の誌面づくりにまで影響を及ぼしている。

「攻略記事をつくる際、これまでは盤面に打ちこまれた釘の拡大写真を載せていたのですが、今後は禁止になりました。付録のDVDのパチンコを打っている動画でも、盤面や釘をズームアップすることはNGになりました」(パチンコ雑誌の編集者)

 そもそも、釘調整をしたパチンコ台が「違法台」として撤去・回収されてしまうと、ホール側は新しい台を買う必要が出てくる。そうなれば、その費用のツケは、当然のようにエンドユーザーに回ってくるのだ。

 まさに、ファンの負担を増やし、パチンコ離れを引き起こすだけの「改悪トリプルパンチ」だが、それもこれも、各組織が自分たちの利益と思惑だけを考えて動き、大局的に市場動向や業界全体を考える人間がどこにもいないからである。

「パチンコ雑誌のライターたちも、パチンコ業界の将来に不安を感じているのか、競艇や麻雀など、ほかのギャンブルに手を出して生き残りに必死になっています」(同)

 逃げ出すネズミも出てきたということは、パチンコ業界はまさに沈みゆく船となっているのかもしれない。
(文=黒木カブ/ライター)

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