西友が4月4日からインターネットスーパーで注文した商品について、再配達を有料にする。
西友は、「ご注文商品をお届けしたにもかかわらずお客様のご不在等により商品の引渡しができなかった場合、再配送料400円を別途ご請求させていただきます」としている。さらに、キャンセルした場合も「キャンセル料」として400円、再配達したのに受け取りを拒否するなど引き渡しができなかった場合には「再配達料+キャンセル料」で800円を請求するとしている。
宅配業界では、最大手のヤマト運輸が配達料金の値上げを発表するなど、業界全体で価格見直しの動きが加速している。特に取り扱い荷物の20%は再配達になっている現状から、再配達の有料化や宅配ボックスの設置、コンビニエンスストアでの受け取りなど、再配達を減らすことが宅配事業者の経営課題のひとつとなっている。
宅配事業を圧迫している最大の要因は、ネット通販の普及だ。アマゾン・ジャパンをはじめとしたネット通販での買い物が広く定着したことで、荷物の取り扱い個数が爆発的に増加し、それが宅配事業者のキャパシティを凌駕する状況になった。だが、配達員の確保もままならず、このままでは早晩、宅配事業は破綻すると懸念する声が高まっている。
配送料金の全面的な値上げを発表しているのはヤマト運輸だけだが、佐川急便や日本郵便も一部の法人契約では値上げするとしている。もうネット通販で「送料無料」の時代は終焉を迎えようとしているのかもしれない。
つまり、再配達は宅配事業者だけではなく、ネット通販業者にとっても喫緊に対応しなければならない問題なのだ。
そんななかで再配送を有料化した西友は、今後のネット通販のメルクマール(判断指標)となるだろう。流通ジャーナリストの渡辺広明氏は、再配達の有料化は当然の流れだと話す。
「日本の宅配事業は、低コストで高品質のサービスが受けられ、世界でも最高水準にあります。宅配事業者が過剰サービスを提供している側面があり、さらに客側もそのサービスを当たり前と考えてしまっています。しかし、ドライバーの労働環境を考えると見直しの時期に来ているのは間違いないでしょう。
今回、西友が再配達料を徴収するという判断は、方向性としては正しいと考えられます。ただし、400円というコストが適切なのかは不透明です。また、再配達有料化に反発した客が離れていかないかなども見極める必要があります。
また、物流業者と西友との契約条項も、今後の通販における再配達の目安となっていくでしょう。たとえば、万が一配達指定時間に届けられなかった場合は、西友がお客に対してどのような対応をするのかなど、運営上のルールなども注目すべき点といえます」
指定時間に配達したのに不在だった場合、再配達料を請求するのは比較的理解を得やすいだろう。だが、「指定時間に配達されなかった」「トイレに入っていたために出られなかった」など、料金を支払うことに難色を示す客も出てくるだろう。「指定時間帯には在宅していたのに、不正確な時刻が不在票に記載してある」などと客がクレームをつけ、水掛け論に発展することも予想される。そういった事態が起きたときに、西友はどう対処するのだろうか。
西友の施策は、流通業界全体にとっても大きな分岐点となる可能性がある。
(文=編集部)