波瑠や東出昌大らが出演するドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)の第8話が6月6日に放送され、平均視聴率は3週連続で自己最高を更新する13.5%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。先週からは1.1ポイントの上昇。当初は波瑠演じる主人公・美都のクズっぷりにイライラする視聴者も少なくなかったが、W不倫が互いの家庭でバレてからは、配偶者たちによる復讐劇が注目されているようだ。それぞれに持ち味を生かした役者の演技もストーリーを盛り立てている。
ただ、第8話については終盤まではダレた展開だと感じた視聴者も少なくなかったのではないか。美都と涼太(東出昌大)はどうやら離婚を決意したようだが、涼太は一向に離婚届にサインせず、宙ぶらりんな関係のまま2人で暮らし続ける。
浮気を告白してしまった有島(鈴木伸之)と、何もかも知っていたとほのめかした麗華(仲里依紗)の夫婦も、一見すると何もなかったかのように暮らしている。だが、一皮むけばやはり有島は浮気していた負い目を常に感じ、麗華も何かといえばそれについてチクチク言い立てていた。「私いまつらいよ。つらい私と一緒にいて息苦しくない? どうしてずっとウソをつき通してくれなかったの?」と麗華。
カマをかけてしゃべらせる頭脳プレーで浮気を自白させたまではよかったが、だからといって夫に絶対的な罰を与えるわけでもなく、自分が圧倒的な優位に立てたわけでもなく、結局つらいままだったという現実。痛快な復讐劇は一瞬だけで、後に何も残さないということを描写しているのだろうか。
2組の夫婦の話が大きく進展しない一方で、どこか意味ありげだった脇役たちは何やら怪しい動きを始めた。どこかずれた人物として描かれてきた有島家の隣人・皆美(中川翔子)は今回、美都に初めて近付いた。「有島さんのお友だちですよね?」と声を掛け、巧みな話術で美都が勤めている眼科のショップカードを手に入れる。もらったカードを見つめる視線は、普段の無邪気な皆美とはうって変わって不気味な影をたたえていた。
皆美は有島が浮気していたことも、その相手が美都であることも知っている。となると、麗華を友だちと信じ込んでいる皆美は、麗華の幸せを邪魔した美都を排除しようとの思考になってもおかしくないが、果たして……。
小田原は好きなのはどっち?
以前から、ゲイではないかと視聴者の間で話題になっていた小田原(山崎育三郎)の動きもエスカレート。美都と別れるように涼太を説得しようとしたり、それがうまくいかないと見るや、美都の母・悦子(麻生祐未)に2人を説得するように頼みに行ったり。悦子もさすがにやりすぎだと感じたのか、よその夫婦に他人が口出しするもんじゃないとやんわりいさめた。小田原も痛いところを突かれて苦笑いせずにいられなかったが、「それとも好きとか?」との悦子の言葉に固まってしまう。
「何言ってんですか」と言い返すも、百戦錬磨の悦子にはお見通し。「俺は誰かに愛されたいと思うほど欲深くありませんから」と意味ありげな台詞を残した。小田原が、涼太と美都のどちらかを好きであることはこれで確定したが、「愛されたいとは思わない」とはどういう意味なのか。どうしてそこまで執拗に涼太と美都を別れさせようとするのか。大いに気になる部分だ。
ともあれ、涼太と美都の離婚の流れは確定的かに思われたが、ドラマ終盤になって美都が不倫の末に妊娠したと告げたことで事態が一変。離婚やむなしに傾いていた涼太の心に変なかたちで火が付いてしまった。「あの男には頼れないんでしょ? 僕の子供として育てるよ」と事もなげに話し、用意していた離婚届をコンロの火にくべた。「これで私を見限ることができるね」と思っていた美都にとっては絶望の展開。どんなにひどいことをしても見放してくれず、「愛し続けるよ」とささやかれることも、耐え難い牢獄なのだとわかる。
だが、美都がつくったそばちょこを手に「やっと使えたね、一緒に」と涙を流しながらそばをすする涼太を見ると、彼にはほとんど悪気がないことがわかる。ただ夫婦として普通の幸せを感じて毎日を過ごしたかっただけなのだろう。涼太がどんなに狂気を秘めた姿を見せてもあっけらかんとしていた美都も、涼太の静かな涙には気圧されたのか「ごめん」とつぶやいた。ここまでずっと観てきた視聴者としては、たとえ一瞬でも、一言でも美都が謝る気になってくれて少しホッとした気持ちである。
ラストは、美都が勤める眼科のクチコミに美都の不倫が書き込まれたり、マンションに不倫をバラす怪文書が投函されたりする衝撃の展開。このドラマで何度も登場する「お天道様は見ている」のキーワードは、どんなかたちで各登場人物に降りかかってくるのか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)