長澤まさみ主演の連続テレビドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の第3話が23日に放送され、平均視聴率は前回から1.4ポイント回復して9.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
本作は、長澤演じるダー子、東出昌大演じるボクちゃん、小日向文世演じるリチャードの3人が信用詐欺師(コンフィデンスマン)となり、欲望にまみれた人間たちから大金をだましとるドラマ。毎回、有名俳優がだまされる悪人役としてゲスト出演することになっている。
第3話は、善人ぶった悪役ぶりにも定評がある石黒賢。石黒は今回、徹底して身につけた美術知識を基にあくどい金もうけをする美術評論家・城ケ崎善三に扮(ふん)した。持ち込まれた美術品の真贋を偽って不当に安く買い取り、裏社会に流して大儲けしているばかりか、その立場を利用して若い女性を食い物にしているという人物だ。
詐欺師一味のボクちゃん(東出)はある日、カフェの店員として知り合った美大生の須藤ユキ(馬場ふみか)が城ケ崎にもて遊ばれたことを知り、かたきを取るために彼から金を奪うことを決意。それを聞いたダー子(長澤)は、美術評論家が抱く「世に知られていない作品を見付けたい」という欲につけ込んだ詐欺を計画する――というストーリーだった。
今回の見どころは、なんといっても怪しい中国人バイヤーに扮した長澤の演技。クルクルのおばちゃんパーマのウイッグを着けて色付きのメガネを掛け、「芸術は特別の人だけできるのもの」「素晴らしいのアーティスト見付けましたねぇ」などとカタコトの日本語を操る姿は、明らかに2016年1月期のドラマ『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)で高畑淳子が演じた中国人社長のオマージュだ。
さすがに本家を越えるには至らなかったが、ものまね芸としておもしろかった。欲を言えば、もっと出番を増やしてもっと派手に活躍してほしかった。こんなふうに女優・長澤まさみの幅広い演技を見せてくれるドラマはほかにない。内容の好き嫌いはあるだろうが、この一点だけでも評価に値する。
その半面、第3話のストーリー自体は少々期待外れだった。いい金もうけの種を見付けたと思い込んだ美術評論家がまんまとだまされた、という至極当たり前の展開で、第1話や第2話のような驚きを感じることができなかった。毎回視聴者をだます仕掛けがあると思っていたのに、それがないままにすんなり終わったのにもずっこけた。
とはいえ、ひとつの話としてはきちんとまとまっており、きちんとオチもある。大がかりな仕掛けを凝らした第1話と第2話を観たことで、勝手に視聴者側のハードルが上がってしまったのかもしれない。
それでも、あえてひとつ難を挙げるとすれば、城ケ崎が改心したかのような後日談を挿入したのは不要だった。須藤も一方的な被害者ではなく、城ケ崎を利用していたのではないかと匂わせる描写もあった。後味を悪くする必要はないが、悪役は悪役らしく憎たらしい存在を貫いてくれないと、視聴者もスカッとできない。悪人を改心させるドラマではないのだから、話をきれいにまとめる必要はないだろう。
さて、次回はNHK大河ドラマ『西郷どん』でも悪辣ぶりを発揮しているベテラン俳優・佐野史郎が悪役を務める。どんな悪人ぶりが見られるか、今から楽しみでならない。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)