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『西郷どん』脚本がヒドすぎて感情移入できない!唐突な展開、しらじらしい台詞の連続

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第17回が6日に放送され、平均視聴率は前回より0.9ポイント増の12.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

 幕府の追っ手を逃れて薩摩にたどり着いた西郷吉之助(鈴木)と月照(尾上菊之助)。吉之助は、薩摩藩が月照をかくまってくれると信じていたが、島津斉彬(渡辺謙)亡き後再び実権を握った斉興(鹿賀丈史)は吉之助を許さず、処刑を意味する「日向送り」の沙汰を二人に下した――という展開だった。

 西郷隆盛の人生において大きな転機となった「月照との心中事件」を描いたわけだが、今回もドラマの出来としてはあまり褒められたものではなかった。まず、吉之助と月照が何の罪を問われて日向送りを言い渡されることになったのか、劇中でまったく説明されない。「斉彬が生きてさえいれば、こんなことにはならなかったのに……」という空気だけでなんとなく話が進んでいき、いつの間にか罪人になっていたという感じである。

 よくよく考えてみれば、幕府に恭順の意を示す斉興にとって、幕府に追われる西郷が邪魔な存在になったことは推察できる。そうであれば、斉興の台詞に一言「この家中には幕府に逆らう者の居場所はない」などと付け加えるべきだったのではないか。そういった理由が提示されないのに、大久保正助(瑛太)も吉之助本人も「日向送り」の沙汰が下った事実だけを受け止めるのはおかしい。

 斉興から、「月照を斬れば吉之助を助命する」との約束を取り付け、急いで本人に知らせに来る正助もどうかしている。それで納得する吉之助でないことは、周囲にいる誰もが知っている。他人を犠牲にして自分だけ助かるような卑怯な行いを最も嫌うのが、このドラマの吉之助だ。正助は今まで、吉之助の何を見てきたのか。それでいて後になってから「死ぬな」と声を枯らして海に叫んでも、しらじらしいばかりである。

 薩摩藩の役人たちが見守るなか、屋形船に乗り込んだ吉之助と月照が海へ出て行くシチュエーションも意味不明だ。これは「日向送り」ではないはずだ。とすると、吉之助が船上で月照を殺害するために仕立てられた船なのか。月照は自身が間もなく死ぬことを知っているようだし、吉之助はギリギリになって自分も共に死ぬと打ち明けていることから、おそらく間違いない。

 吉之助と月照が入水心中を図った史実に合わせるためとはいえ、展開としては少々苦しい。吉之助が月照を斬るのに何も海上に出る必要はない。普通に上意であるとして斬ればいい話だ。薩摩藩も、船など出すから2人に入水されてしまうのである。史実との辻褄を合わせようとするあまりに、展開が不自然極まりないものになっている。脚本の中園ミホ氏が推していたはずの「ボーイズラブ」も不発で、吉之助と月照が手を取り合って海中に落ちただけ。そこに至るまでの2人の描き込みがまったく足りていないため、なんの思い入れも湧かない。

 今回はこのほかにも、現代の我々が知っている「結末」から逆算しただけの展開や台詞が目立った。そのひとつは、夫である家定(又吉直樹)を亡くした篤姫(北川景子)の言動だ。お付きの幾島(南野陽子)に、「もう役目は果たしたのだから、大奥を去って薩摩に帰ってもいいのではないか」と進言されるも、「私はやはりここにおる」ときっぱり拒否する。

 北川の毅然とした表情はかっこいいが、大奥にとどまる理由が何かあるのかと思えば、それは特にない様子。「史実上、篤姫は家定の死後も大奥にとどまったから、ドラマでもそうした」というだけの展開で、完全に脚本の失敗である。「家定のためにとどまる」でもいいし、「斉彬のため」でも「薩摩のため」でもいいが、なんでもいいから一言、理由を言わせるべきだったのではないか。

 吉之助に向かって「おはんはまだまだ薩摩のために、日本国のために生きねばならん男じゃ」「おはんが死んだら、薩摩も日本国も死んでしまっど」と大げさなことを言う正助にも違和感がぬぐえない。いかにも西郷隆盛がこの先どうなるかを知っている現代人が書いた台詞だ。この時点では、薩摩はともかくとして「日本のために必要な男」とまでは言えないだろう。

 さて、次回からは吉之助が奄美大島で流人として暮らす「島編」がスタートするが、視聴者の間では「もっとほかに描くことがあるのでは」と不安視する声も少なくない。制作側は島編にかなり力を入れているようだが、はたして視聴者の支持を得られるだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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