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苦境のワコールの最大の汚点、ピーチ・ジョン買収の代償…名門ブランド毀損

文=編集部

 06年5月12日、記者会見で資本・業務提携をぶち上げたが、その内容に証券市場は腰を抜かした。PJの資本金は9000万円。株式は会長の野口正二氏が49%(882株)、社長の野口美佳氏が51%(918株)を保有していた。1カ月後の6月2日、正二氏が持つ882株をすべてワコールHDが取得した。買収額は149億9400万円と、“大盤振る舞い”だった。

 この時点でPJの出資比率は美佳氏が51%、ワコールHDが49%となった。さらに08年1月10日、ワコールHDは美佳氏が保有するPJ株の51%を株式交換方式で取得し、PJを完全子会社にした。交換比率はPJ株1株に対してワコールHD株7300株。美佳氏は保有していたPJの918株と引き換えに、ワコールHD株式670万1400株を手にした。株式交換が行われた1月10日のワコールHD株式終値は1422円で、美佳氏が入手した株式の時価総額は95億2939万円に上る。

 この結果、美佳氏はワコールHD株の4.67%を保有する個人筆頭株主で、全体でも第4位の大株主に躍り出た。創業家出身の能交氏の持ち株の4.9倍の株式を所有した。ワコールHDの09年3月期の年間配当金は1株25円。美佳氏は同年、1億6753万円の配当金を手にした計算だ。

 だが、ワコールHDにとってPJの買収は大失敗だった。伸び悩む下着部門を強化する狙いで買収したとみられているが、完全に裏目に出た。そのため、後始末に追われることになった。

 野口正二氏から149億9400万円で取得したPJ株の公正な価値の評価を実施し、08年3月期連結決算で、持ち分法の投資損失として46億9400万円を計上した。高値づかみしていたわけだ。

 09年夏、“押尾学事件”が起きた。東京・六本木ヒルズのレジデンス(住宅棟)の一室で、女性が死亡した。警視庁麻布署は、エクスタシーと呼ばれる合成麻薬・MDMAを使用した麻薬取締役違反容疑で、その部屋にいた俳優の押尾学を逮捕した。この事件は意外な方向に発展した。美佳氏が押尾に六本木ヒルズの部屋を無償で貸していたとして週刊誌の話題になったのだ。

 このスキャンダルでPJのブランドイメージに決定的な傷がつき、ワコールHDの業績を直撃した。ワコールHDは08年3月期から11年同期までにPJへの投資損失と資産再評価で累計74億8900万円の損失を出すことになった。

 美佳氏は13年3月期を最後にワコールHDの大株主から姿を消し、15年にPJを去った。

 PJの買収は、能交氏の企業家人生最大の汚点といわれている。
(文=編集部)

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