学力テストの英会話、正答率がわずか10%…日本人が英語を話せない医学的理由?
去る7月31日、文部科学省は小学6年と中学3年を対象に今年4月に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。テストは国・公・私立、約3万校の児童生徒約217万人を対象に実施。その結果、以下の結果が得られた。
ここで注目すべきは「英語で話す力」の正答率が30.8%と著しく低く、そのなかでも「テープから流れる先生と生徒の会話に加わり、質問に即興で応じる問題の正答率=10.5%」と極端に低い点である。
その原因は、日本人のDNAの中に刻印されている“nature”(=天性、生まれつきの性質)によるものだろう。ヨーロッパ人は自国語以外に1つや2つの外国語(ヨーロッパ語)を話せるのが当たり前である。スイス人は国内の公用語がフランス語、ドイツ語、イタリア語であり、ほかにロマンシュ語、英語を話す人も多く合計5つの言語をしゃべる人も少なくない。
なぜか。ヨーロッパの国々の歴史は侵略の歴史であり、近隣から異民族が侵入してきた場合、相手の言うことが解せないと対応に困るし、被害も大きくなるから、ヨーロッパ人はいくつかの言語を操る能力が遺伝子の中に刻印されているのである。
しかし、ヨーロッパのなかにも「自国語以外を話すのは苦手」という日本人のような国民がいる。それはイギリス人である。日本と同じく島国に育ち、他のヨーロッパ諸国のように国境を接した近隣の国から侵略されるリスクが低いので、自国語以外の外国語を学ぶ能力を持つ遺伝子をつくる必要がなかったわけだ。
アメリカで生まれ、アメリカの「国技」でもある野球はアメリカ以外では日本、南米、台湾、韓国では普及しているが、ヨーロッパではまったく人気がないし、競技人口も僅少である。なぜか。野球のごとく、攻めているバッターに対して、守りのほうはピッチャーとキャッチャー以外の7人は「ただ突っ立ているだけ」というスポーツは、ヨーロッパ人の遺伝子に興味を喚起しないのである。ヨーロッパ人は常に侵略と被侵略、つまり攻撃と守備を繰り返してきた人種であるので、サッカーのごとく常に攻撃と守備が目まぐるしく変化するスポーツには興味があっても、一方だけが攻め、他方はその間「何もしないで守っている」という野球に興味を持つ遺伝子がないわけだ。
こう考えてくると長い間の歴史、生活習慣によってつくり上げられた“nature”がそう簡単に変えられるわけはなく、日本人の英語を話す力は、英会話スクールを何回も変えたり、たとえスクールに長く通ってもなかなか養われないわけだ。
「習うより慣れよ」
しかし、語学を習得する最上の方法は「習うより慣れよ」のことわざのごとく、日本語の通じない外国へ行き、外国の言葉を耳に慣れさせることだ。外国にも英会話スクールにも行けないで英語を話せるようになるには、中学校3年くらいまでに習った英語の短文を何十回、何百回と読んで暗記されるとよい。
先日、筆者が東京から住居地のある伊豆へ帰省している電車の中で、大柄な白人から話しかけられた。聞けばニューヨークの警察官だという。日本が大好きで休暇のたびに日本へきて、日本全国を旅しているという。別れ際、「あなたみたいに英語の上手な日本人に会ったことがない」と言われた。私は英米豪など英語圏に留学した経験はないが、中学3年程度の英語の短文を50年以上も、ほぼ毎日繰り返し読んで暗記してきた。だからこそ、その短文をつなぎ合わせて、英米人との会話ができるのだと思う。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)