不動産コンサルタント、ブラック企業アドバイザーという2つの顔を持つ楯岡悟朗氏は、そのような状況を経験したという。
そんな楯岡氏が7月に上梓した『ここで辞めたらただの負け犬!ブラック企業で「修行」した男の日常』(KADOKAWA/中経出版)は、自身の経験を基にブラック企業での生き残り方を綴っており、注目を集めている。
今回は楯岡氏に、
・パワハラの実体験
・ストレスをためない方法
・仕事を続けるコツ
などについて話を聞いた。
●ブラック企業での苦悩
–入社した企業が「ブラック企業だ」と感じたエピソードを教えてください。
楯岡悟朗氏(以下、楯岡) 大手有名企業に入社しましたが、入社早々上司に呼ばれて「どんな感じで仕事をしていきたいか、イメージはあるか?」と聞かれ、「ファイナンシャルプランナーの資格を取得し、専門知識を活用してお客様の不動産売買のお手伝いがしたいです」と答えました。すると、「お手伝いが金になるのか? 俺たちは兵隊なんだ。金を稼がなければ存在価値はねえんだ。バカヤロー」と怒鳴られました。
–体育会系の職場ですね。
楯岡 入社してから気が付いたのですが、私以外の社員の年齢がみんな高いのです。一番若い社員が使い走りをさせられるので、若い人はすぐに辞めてしまうのです。私も何度も耐え切れなくなって辞めようと思いました。「不動産の仕事は、この会社以外でもできる」「環境が変わればうまくいくはず」と考え、会社を辞めて開放感に浸る自分を毎日想像していました。
–一番こたえたことはなんですか?
楯岡 言葉の暴力です。それも人格を否定する言葉です。パワハラという言葉の意味を知っていても、パワハラのつらさは経験した人でなければわかりません。「お前がダメなのは、お前だけのせいじゃないんだよ。お前の人生に携わったすべての人間のせいなんだ。恨むんなら、そいつらを恨め」と言われたことが一番こたえました。私の人生はおろか、私に関わってくれたすべての人たちを否定されたのです。気持ちの逃げ場がなくなりました。
–それでも仕事を続けたのはなぜですか?
楯岡 あるインタビュー記事に励まされたのです。国民的アイドルグループのリーダーのインタビューでした。その中で「忙しくて大変ではないですか?」との質問に対して「仕事が忙しいと、自分が世の中で一番忙しいと思ってしまいますが、そんなことはないですよね。仕事をつらいと思ったことはありませんが、きっと僕より忙しくてつらい思いをしている人はたくさんいると思います。それに比べたら僕なんてまだまだです」と答えていました。自分の苦労など、まだ大したことないのかもしれないと思いました。大変なのは自分だけじゃないと思えただけで、同志がいるような気がして心強くなりました。「どうせ一生いる会社じゃない」「クビにするならしてみろ。喜んで辞めてやる」と開き直れました。
『ここで辞めたらただの負け犬!ブラック企業で「修行」した男の日常』 怒声とどろく毎日の説教、人格否定のオンパレード、手は出ないけど足は出る!?「豆腐のメンタル」を持つサラリーマンがズタボロになりながら戦った日々…ブラック企業に教えられた「本当の働き方」