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ハリル電撃解任の裏に田嶋サッカー協会会長の恐怖政治…好き嫌い人事で日本代表を翻弄

文=中村俊明/スポーツジャーナリスト
ハリル電撃解任の裏に田嶋サッカー協会会長の恐怖政治…好き嫌い人事で日本代表を翻弄の画像1田嶋幸三・日本サッカー協会会長(写真:ロイター/アフロ)

 ワールドカップ開催をわずか2カ月後に控えた4月9日、日本サッカー界に激震が走った。代表監督であるヴァヒド・ハリルホジッチ氏の解任が発表されたのだ。

 過去のサッカー界の歴史を振り返っても、大会2カ月前での解任は、28年前に中南米で一度類似するケースがあった程度で、ほとんど例がない。番記者や、関係者ですら「まったく予測ができなかった」と口を揃える今回の解任劇。批判の矛先は、2016年から会長に就いている田嶋幸三氏に自然と向けられた。

 田嶋氏に関しては、就任当初から会長としての資質に疑問を持つ関係者が数多く存在していた。

「田嶋氏が会長になってから、人事改編が行われました。まず、日本サッカー界の功労者であり自身と会長の座を争った原博実専務理事(当時)と、霜田正浩(元技術委員長・ナショナルチームダイレクター、現レノファ山口FC監督)の降格人事です。事実上の更迭といっていいでしょう。対立者の影響力を弱め、自身が操りやすい人物を入閣させました。岡田武史元代表監督、西野朗新監督はその筆頭といえます。新監督に関しても、田嶋氏は岡田氏を登用したかったのが本心ではないでしょうか。田嶋氏は自分の色を出したがる人物で、霜田氏が招聘したハリルホジッチ氏には、当初から良い印象を持っていなかったようです。このタイミングでの解任も、言い訳づくりと責任逃れの側面が大きいのではないでしょうか」(代表番記者)

 人事面での改編は、当然ながら協会内に混乱をもたらした。出たがりで何事にも口を挟みたがる性格の田嶋氏は、報道陣に対しても排他的だったという声がある。

「以前、田嶋氏を含めた協会の体制批判を記事にした記者がいました。その内容が田嶋氏の逆鱗に触れ、その記者は結果的に閉め出されました。もともと、日本サッカー協会自体が、批判に対して強いアレルギー反応を起こす組織でしたが、田嶋氏の会長就任以降はその流れに拍車がかかりました。いわば“恐怖政治”といえる体制で、協会の人間も『不満があっても、田嶋氏は執念深い人なので、口に出せない』と怖れていましたね」(同)

西野氏監督就任の裏側

 また、協会内では西野氏の監督就任には懐疑的な意見も多い。というのも、すでに現場を離れて数年が過ぎ、Jリーグでの実績を差し引いても、チームの立て直しに適任といえる人物ではないという見方が広がっていたためだ。だが、そういった指摘をかき消したのは田嶋氏の鶴の一声だったという。

「西野氏がガンバ大阪、柏レイソルの監督時代に残した成績は、文句のつけようがありません。それに気取ったところがなく、非常に裏表がない人物です。ただ、彼は直近のヴィッセル神戸でも、名古屋グランパスでも失敗しています。監督として優秀な人材であることは間違いないですが、『長期政権で、かつ能力がある選手を選手が揃っていれば』という条件がつきます。つまり、今のガタガタな代表チームには当てはまりません。

 田嶋氏は、かねて浦和の高校出身という同郷で近しい関係である西野氏を監督にしたがっていました。そんな意図もあり、西野氏の経歴が傷つかないタイミングで担ぎ上げたというわけです。田嶋氏は、西野氏が前に出たい性格なのもよく知っているので、断られるという心配はしていなかったでしょうね。仮に西野氏で失敗しても、時間がなかったので仕方がない、ハリルホジッチ氏を招聘したのは自分でない、という言い訳が成り立つわけです」(協会関係者)

 同関係者によれば、現場レベルでも混乱と不満が起きていたという。原因の所在は、元コーチの手倉森誠氏にもあるという。手倉森氏には、選手とハリルホジッチ氏の橋渡し役としての役割が期待されていた。ところが、選手と監督のいずれも、明らかにコミュニケーションが不足し、周囲に不満を洩らしていた。当然、そのあたりの事情は、現場を通して協会の上層部の耳にも入っていたが、上層部は見て見ぬふりを決めこんだ。

「手倉森氏は、一言で言えば野心家。周囲にも、『コーチのポジションは俺にとってはステップアップでしかない。俺が監督をやれば(違う)』と吹聴していました。同氏がハリルホジッチ氏の後釜を狙っていたのは、みんな気づいていました。酒好きでもあり、酔っ払うとハリルホジッチ氏の悪口ばかり言っていましたから。あまりに度が過ぎるので、協会内でも彼に真剣に説教をする人物もいたくらいです。ただ、彼も今回の解任劇の被害者でもあります。西野氏が監督に就任して、代表から“切られた”わけですからね。田嶋会長体制が続く限り、上がり目はないかもしれません」(前出・番記者)

 世界的に見ても、協会を私物化する会長の存在は珍しくない。しかし、ワールドカップで勝利するという目標から逸脱しているように映る今回の解任劇に関しては、献身的なサポーターたちの声と周囲の批判に、真摯に耳を傾けるべきだろう。フットボール後進国である日本が、世界的に類を見ない土壇場での解任劇の末にワールドカップで成功する可能性は、言わずもがなだろう。

 田嶋氏には、監督解任の是非を問う声に対して、真摯な姿勢を求めたい。
(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト)

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