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筆者提供
こんにちは。江端智一です。
今回のテーマとしては
・性同一性障害の施術で女性から男性になった人は、法律上および血縁上の父親になれるか?
・男性から女性になった人は、赤ちゃんを産むことができるか?
という2点について、最近の裁判例と、iPS細胞などの技術的観点からお話ししたいと思っていました。
しかし、調べているうちに、この問題を理解するためには、どうしても民法772条の「嫡出の推定」を深く理解する必要があることがわかってきました。そこで、いったん「性同一性障害」から離れて、この法律の内容と、併せてその法律によって生じる「300日問題」についてお話ししたいと思います。
●民法における父の推定
「血は水よりも濃い」「産みの親より育ての親」、この2つのことわざは矛盾していますが、私たちはケースに応じて使い分けます。これは、司法の判断においても同じようです。
最近は、ここにDNA鑑定という、生物学的な親子関係を確定する技術が登場してきたことで、問題をさらにややこしいものにしています。
「親子」を定義することは大変難しいのです。実際に民法を読んでみますと、この難しさがよくわかります。
第772条には、次のように規定されています。
第1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
江端解釈「結婚中に妻が妊娠した場合、その子どもの血縁上の父がどこの誰であろうとも、今結婚している夫の子として戸籍に記載する。文句があるなら訴えを起こして取り消しなさい」
「推定」とは、「暫定的に、そうしておく」ことで、「訴えを起こせば、ひっくり返せる可能性がある」という意味の法律用語です。母が出産によって確定的に決まるのに対して、子どもを生む能力のない父の身分は不安定なのです。
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