野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドのカーライル・グループが、共同で国内ビール5位のオリオンビールを買収する。野村HDの子会社、野村キャピタル・パートナーズ(NCAP)と米カーライル・グループが出資する買収目的会社オーシャン・ホールディングスが、オリオンに対するTOB(株式公開買い付け)を実施。買い付け期間は3月22日までで、買い付け価格は1株7万9200円。買収価格は約570億円になる見通し。
株式の取得後にオリオンの嘉手苅義男会長や役職者がオーシャンに出資することでMBO(自社買収)の形式を取る。オリオンはオーシャンの傘下に組み込まれる。
オリオンの筆頭株主で10%の株を保有するアサヒビールも、TOBに応じる方針。その後、オーシャンに10%程度出資し、資本関係を維持する。沖縄県外でのオリオン商品の販売連携も継続する。
買収完了後のオリオンの取締役は10~11人で、NCAPとカーライルがそれぞれ3人ずつ、オリオンが3~4人となり、アサヒビールから社外取締役1人を迎え入れる。野村HDとカーライルによる経営は5年程度で完了する予定で、新規株式公開(IPO)も視野に入れている。
高齢化した株主が株式の現金化を要求
沖縄を代表する企業であるオリオンのM&A(合併・買収)の背景には、何があるのか。
地元、琉球新報電子版(1月23日付)は、同日行われたオリオンの與那嶺清社長の記者会見を速報した。
「会見に出席した亀田浩取締役は、MBOの必要性としてビールの消費量減少や消費者ニーズの多様化など事業環境が変化していること、株主の高齢化に伴い金銭化などを求める流動化需要が出てきたことなどを上げて、『野村キャピタル・パートナーズとカーライルは一緒に汗をかいてくれるパートナー。株主の資金ニーズにもこたえられるし、企業価値をともに上げていける』と話した」
オリオンをファンド連合に売却する本当の意図がはっきりと語られている。高齢化した株主たちからの株式の現金化を求める声にこたえるために、野村・カーライル連合の資金に頼ったということだ。
オリオンの株主数は599人のうち543人が個人(18年3月末現在)。所有株主数の割合は48%。非上場なので市場では売れない。高齢化した株主が現金化を求めるのも無理はない。そこでファンド連合への売却で資金をつくることにしたわけだ。
オリオンの創立者は故具志堅宗精氏。米国統治下で宮古民政府知事を務めた後、1957年に沖縄ビール(現オリオンビール)を創立した。戦後の沖縄財界四天王の1人だ。
社名のオリオンはオリオン座が由来で、一般公募で選ばれた。賞金は1等1万B円。B円とは軍票のこと。1ドル360円で換算すると約3万円に相当する。本土の大卒の初任給が1万円未満の時代で、当時は破格の高額として話題になったという。
1959年に初めてオリオンビールを販売し、主力商品「オリオンドラフト」「いちばん桜」などのほか、沖縄特産「さんぴん茶」などの清涼飲料水も生産している。
2018年3月期の連結決算の売上高は前期比1%増の283億円、当期利益は同17%減の23億円。18年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の課税済み国内出荷量は354万ケース(1ケース大瓶20本換算)で、市場シェアは0.9%だった。