
令和元年になった。この新元号元年のマンションマーケットを占うのが、東京五輪の選手村13万平方メートルの跡地開発で建設、分譲が予定されるマンション群、通称「HARUMI FLAG」だ。
この開発は2020年の五輪終了後、選手村として活用されていた建物を改装、さらに新たにタワーマンションを含む新築マンションを加えた総戸数5632戸、計画人口1万2000人の一大住宅街を開発しようというものだ。
このうち賃貸住宅1487戸を除く4145戸が分譲対象となる。首都圏で年間供給される分譲マンション戸数は3万8000戸程度。年間供給戸数の1割強に及ぶ巨大プロジェクトである。開発分譲にあたるのは三井不動産レジデンシャルを幹事として三菱地所レジデンスや住友不動産、野村不動産といったいわゆるメジャー7を含む11社にも及ぶ。
発表された計画内容によれば、分譲が行われるのは4街区に5棟、5、6街区にそれぞれ7棟、計19棟、そのうちの2棟が地上50階建てとなるタワーマンションだ。14階建てから18階建てで構成される低層棟が2690戸、タワーマンションが1455戸という内訳になる。住戸タイプは床面積85平方メートル程度の3LDKのファミリータイプが中心となる。
この分譲が早くも開始される。最初に開発されるのが選手村宿舎を改装して「新築」として売り出すもので、入居予定は23年3月を予定している。タワーマンションは24年以降の引き渡しとなり、プロジェクト全体が完了するのは24年度中になる。最初に引渡しする低層棟でも4年も先の話。ずいぶん気の長いことだが、分譲を担当するデベロッパーサイドからみれば、この史上最大のプロジェクトをさばくには、かなりの長期戦での販売を覚悟せざるを得ないというのが本音のようだ。
「買い」かどうかを検証
さて、このプロジェクト、今年のマンションマーケットを占う試金石ともいえるが、実際「買い」といえるのかを検証してみよう。
立地は中央区晴海5丁目。マンション立地としては残念ながらハイクラスの立地とはいいがたい。マンション購入者がまず気にするのが交通利便性である。本件は、最寄り駅が都営大江戸線「勝どき」駅となるが、駅まではマンション敷地入り口からでも徒歩でゆうに20分を超える。現実問題としてこの駅まで毎朝毎夕歩く人はいないだろう。都心につながる唯一の交通はバスだ。東京都ではBRT(バス高速輸送システム)を用意する。このバスを使えば環状2号線で港区の新橋駅まで10分程度でつながるという触れ込みだ。ただし、当初期待されたバス専用のレーンが設けられることはなさそうだ。環状2号線は片側2車線道路。豊洲市場関係車両も集中する道路で、そのうちの一本をバス専用とするわけにはいかないのだ。