不祥事を起こした企業の経営陣がそろって頭を垂れる――そんな光景はもう見飽きたと思わるかもしれないが、世の中には監督官庁から違法行為を認定されたあげく、1億円を超える罰金を課せられても、一言も謝罪しない企業がある。
レンタル大手TSUTAYAが、虚偽の広告を2年間にわたって出し続けていたとして、今年2月に消費者庁から、不当に稼いだ39億円の3%にあたる1億1753万円の課徴金納付命令が出された。
「動画見放題」と宣伝していた「TSUTAYA TV」だが、実際に見放題だったのは動画配信全体の26%程度。「新作」及び「準新作」にいたっては1%ないし9%だったことから、悪質な虚偽広告だと批判が多く上がった。
その詳細については、3月25日付当サイト記事『ツタヤTV、虚偽広告で巨額利益計上…ツタヤ図書館と共通する実態乖離のイメージ商法』で報じているので、ご参照いただきたい。
筆者が調べた限り、この件について同社が対応したのは、最初に消費者庁が景品表示法違反を認定し、措置命令を出した直後の昨年5月30日に自社サイトで謝罪文を掲載した一度のみ。同社の親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にいたっては、一言のコメントも出していない。
一般的には、子会社が不祥事を起こした場合、親会社の経営陣が謝罪会見を行うのが慣例となっているが、CCCは積極的に対応する考えはないようにみえる。
CCCにとって、TSUTAYAが展開しているレンタル事業は、創業時からの基幹事業のひとつで、グループの中核をなす。TSUTAYAの会長にはCCCの増田宗昭社長が就任しており、CCCの100%子会社である。形式的には別法人ではあるが、切っても切れない関係にある。
3年前、日産自動車との合弁子会社が関与した燃費データ不正が発覚し、消費者庁から「優良誤認」と指摘された三菱自動車が、厳しい世間の批判にさらされたのと比べると、あまりにも差が大きい。
質問に対して無回答のCCC
3月8日、前出記事を書くに当たってCCC広報室に6つの質問を送った。このとき、筆者が問題視にしたのは、虚偽広告の事件そのものではない。それは、公共図書館の運営という公益性が高い業務を担っているCCCのコンプライアンス意識である。
調べてみると、TSUTAYAが景品表示法に違反して虚偽広告を流していた期間に、親会社のCCCが公共図書館の指定管理者に選定されていたのだ。その不合理さについては、3月17日付記事『ツタヤ図書館、虚偽広告調査中に和歌山市が「15億円」運営委託決定か…異例の短期間で選定』において詳報した。
指定管理者の応募時に、消費者庁から違法の可能性を指摘されていたことを和歌山市に報告していたのかなど、疑問点を具体的に挙げてCCCに事実関係の確認をお願いしたのだ。