――TSUTAYAの不正を知ったのはいつか。
担当者 今年2月の課徴金命令が出たときに、ニュースで知った。
――CCCを指定管理者に選定した半年後の昨年5月の時点で、消費者庁から措置命令が出ているが、知らなかったのか。
担当者 それについては、まったく知らなかった。
――今回の情報開示申し出の回答の主旨を聞きたい。
担当者 こちらで対応を検討した結果、備考欄に記載したとおり、CCCはTSUTAYAと別人格なので問題なしとした。
――事前または事後にCCCからの報告はあったのか。
担当者 CCCからの報告は特にない。
――和歌山市からCCCに報告は求めたか。
担当者 こちらからも特に報告を求めていない。なので文書は存在しない。
――親会社と子会社は別人格とする判断は、法的に検討されたものか。
担当者 図書館で決めたことだ。
――TSUTAYAはCCCの100%子会社で代表権もCCCの社長が保持しているので、たとえ形式的に別人格であっても、世間は同一の企業とみるのではないか。
担当者 検討した結果、CCCはTSUTAYAと別人格なので問題なしとした。
――法務部門などで、専門的な検討をした結果の回答なのか。
担当者 図書館内で検討した結果、CCCはTSUTAYAと別人格なので問題なしとした。
この担当者は愛想もよく、返答が遅れたことを恐縮していたものの、CCCの責任等、核心部分になったとたん「図書館内で検討した結果、問題なしとした」とのセリフをひたすら繰り返すのみで、話はまったくかみ合わなくなった。
子会社の不祥事には目をつぶる異常さ
「親会社とは別人格子会社が起こした不祥事について、親会社が責任を取る必要はない」という言説に、果たして正当性があるのだろうか。
そこで、大企業グループの子会社が起こした不祥事で、親会社の責任が問われなかったケースはあるのか、最近の事例を詳しく調べてみたが、そのような案件は1件も見つからなかった。
子会社が起こした重大な不祥事は、枚挙に暇がないほどある。
たとえば、2017年に発覚した三菱マテリアルの品質データ改ざんは、翌年にはグループ子会社3社でも新たに改ざんがあったとして、その後、本社社長が辞任。
15年に、横浜の傾斜マンションで基礎工事の際に行った地盤調査データの偽装が発覚した旭化成建材では、経営陣が総退陣したうえ、親会社でグループの建材部門を統括していた副社長が辞任。
最近では、長年、建築用耐震用ダンパーの検査データを改ざんしていたKYBの事件では、親会社の社長が引責辞任。
一般消費者にも身近なところでは、“元祖SNS”といわれる「mixi」の運営会社ミクシィが18年6月に起こした商標法違反事件がある。子会社が運営するチケット転売サイト「チケットキャンプ」に誘導する目的で、ジャニーズ事務所所属アーティストの情報を自ら運営するサイトに無許可で掲載したとして、商標法違反の疑いで社長が書類送検された。チケットが高額で転売される不正が相次いだことが、事件の背景にあるとメディアでは報じられ、もちろん親会社の社長は辞任している。
こうしてみてみると、「親会社は、別人格だから責任なし」という和歌山市の判断がどこか遠い世界の話のように聞こえる。
誤解のないように言っておくと、「親会社は別人格なので、子会社の不祥事について責任はない」とは、CCCが言っているわけではない。あくまでも、CCCを図書館の運営者に指定している和歌山市、いわば発注するクライアント側が「問題なし」と判断しているのだ。
違法行為について、処分どころか1枚の始末書の提出すら要求しないのは、公平性やコンプライアンスの徹底が求められる行政機関としては、あまりにも異様である。
さすがに今回ほど明確な違法行為ではないが、不祥事が起きるたびに行政がCCCを全力でかばうケースは、ツタヤ図書館を誘致した自治体で、もはや“恒例行事”となっている。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)