
日本は5月1日、新たな時代「令和」に突入した。思い起こせば、昭和20年に敗戦を迎えた日本は戦後、世界を震撼させるような驚異的な経済復興を成し遂げた。昭和25年(1950年)に始まった朝鮮戦争による特需という追い風もあったが、たゆまぬ創意工夫と国民あげての刻苦勉励の成果である。繊維製品から自動車、家電製品やITに到るまで、日本製品は「メード・イン・ジャパン」のブランド力を背景に世界市場を席巻した。
日本企業の成功や社会安定の秘訣はなんなのか。多くのアメリカのメディアが日本の歴史的発展の過程や絆を大切にする「終身雇用」「年功序列」「家族主義」を積極的に取り上げた。また、日本人のバブル最盛期に見られた金に糸目をつけない贅沢ぶりも大きな話題となった。日本の高級寿司店では、金粉を散りばめた豪華絢爛な寿司が振る舞われ、当時を思い起こすエピソードとして今も語り継がれているほどである。
いずれにせよ、アメリカはじめ世界の経営者たちが注目し、称賛したのは、日本人が打ち出した、従来の欧米型の資本主義に代わる、新たな「人間的な資本主義」という姿勢や価値観であった。その流れのなかで、大都市における人口密集がもたらす問題や、経営者と労働者との家族的な一体経営ゆえにもたらされる自由度の制限、さらには成長を最優先した結果、日本各地で発生した公害問題といった課題に対しても、「日本なら必ず解決策をもたらすに違いない」と世界から熱い眼差しが寄せられたものである。
しかしながら、「平成」時代の幕開けと共に打ち出された総量規制の影響もあり、不動産市場が崩壊してしまい、あっという間に総崩れという憂き目をみることになった。まさにバブルがはじけた瞬間である。その後、「失われた20年」と揶揄されたように、日本は不況とデフレの波に飲み込まれ、経済的活力を喪失することになる。
しかし、バブル崩壊の真相は一向に明らかにされないまま、昨今、日本は新たな「アベノミクス」という名の成長戦略にまたもや踊らされ、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックの「夢よ、再び!」というようなスローガンに浮かれ始め、バブル再来の道を歩もうとしているのではないだろうか。