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東京・新宿区と渋谷区で“子どもが増えている”…「東京=低出生率」の終焉か

文=池田利道/東京23区研究所所長
東京・新宿区と渋谷区で子どもが増えている…「東京=低出生率」の終焉かの画像1
西新宿の超高層ビル群(「Wikipedia」より/Morio)

 新宿区渋谷区、豊島区(池袋)と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。大ターミナル、盛り場、百貨店。どれも間違いではない。だが、データにハッキリと現れてくる大きな特徴がもうひとつある。ひとり暮らしの多さだ。

 全世帯数に占めるひとり暮らし世帯の割合は、全国平均で34.6%(2015年、以下同)。23区の平均は50.6%で、2軒に1軒はひとり暮らしという勘定になるのだが、新宿(64.9%)、豊島(63.5%)、渋谷(63.0%)、中野(61.9%)の各区は、さらに輪をかけてひとり暮らしが多い。中野区を副都心と呼ぶのは抵抗があるかもしれないが、ひとり暮らしが多いという点では、ほかの副都心区と似通っている。

 ひとり暮らしには、さまざまなタイプがある。学生、若い独身者、中高年の未婚・離婚者、単身赴任、配偶者に先立たれた高齢者。全国ベースで見ると、ひとり暮らしの年齢構成は65歳以上がもっとも多い。これに対して、東京23区では25~44歳が4割以上を占める。東京・新宿区と渋谷区で子どもが増えている…「東京=低出生率」の終焉かの画像2

 実は、副都心各区は、前述したどのタイプのひとり暮らしも多い。住宅の供給も、商店の構成などまちの構造も、ひとりで暮らす人たちにとって便利な「ひとり暮らし天国」になっているからだ。なかでも、最大のボリュームゾーンである若い独身のひとり暮らしの集積は、副都心区が抱える課題を象徴的に示す存在だといっていい。

実利重視の男性、ブランド重視の女性

 若い独身者が多いといっても、渋谷区と豊島区ではずいぶんイメージが違う。女性100人に対する男性の割合を示す「性比」を見れば、その謎が解ける。性比を狂わす理由はいろいろある。たとえば、65歳以上の高齢者の性比は全国平均も東京23区も、ともにおよそ76。100を下回っているということは女性のほうが多いということで、それは女性の方が長生きだから。一方、若い世代では、ひとり暮らしのうち男女どちらが多いかで、性比の高低が決まってくる。東京・新宿区と渋谷区で子どもが増えている…「東京=低出生率」の終焉かの画像3

 25~44歳の性比を記した図表2は、まちに対する男女間の選好度の違いを明快に示している。男性はもっぱら実利重視。給与住宅(社宅や官舎など)が多い千代田区は少し性格が異なるものの、中野区、豊島区、新宿区、台東区など性比が高く、つまり男性が多い区は、交通が便利なわりには家賃が手頃であり、飲食店などが多いという共通した特徴がある。

 これに対して、女性が多いのは、世田谷区、中央区、港区、目黒区、文京区、杉並区、渋谷区。女性のまち選びはブランド重視であることが、手に取るように理解できるだろう。

ファミリー層が少ない副都心区

 性比が高い豊島区は、若い女性が少ないから消滅の可能性がある。では、若い女性が多い渋谷区は大丈夫かというと、そう単純な話ではない。若い女性が多くても、カップルができて子どもが生まれなければ、やはり消滅の可能性は残る。

 実際、副都心区の合計特殊出生率(以下、「出生率」と略称する)は低い。17年の23区別のランキングは、渋谷区が17位、新宿区が18位、豊島区が21位、中野区が22位。かつてはもっと深刻で、11年までは渋谷区がほぼ最下位を独走し、その後も副都心区のいずれかが23区の最下位に名を連ねるという状態が続いていた。

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

『なぜか惹かれる足立区~東京23区「最下位」からの下剋上~』 治安が悪い、学力が低い、ヤンキーが多い……など、何かとマイナスイメージを持たれやすい足立区。しかし近年は家賃のお手傾感や物価の安さが注目を浴び、「穴場」としてテレビ番組に取り上げられることが多く、再開発の進む北千住は「住みたい街ランキング」の上位に浮上。一体足立に何が起きているのか? 人々は足立のどこに惹かれているのか? 23区研究のパイオニアで、ベストセラーとなった『23区格差』の著者があらゆるデータを用いて徹底分析してみたら、足立に東京の未来を読み解くヒントが隠されていた! amazon_associate_logo.jpg

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