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在職老齢「年金」が突然、年22万円から2万円へ減額…年金事務所の“言い逃れ”説明に唖然

文=林美保子/フリーライター
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日本年金機構のHPより

 昨年、夫は62歳になり、やっと厚生年金をもらえる年齢になった。嘱託社員として働いているため受給額に期待はしていなかったが、多少は入るだろうと、我が家の財務大臣である私は楽しみにしていた。ところが、である。

年金が年22万円から2万円へ、一気に減額

 年金手続の際、年金事務所で提示された年額は約22万円。思ったよりも少なかったが、それでもそのまま貯蓄に回せば老後資金の多少の足しにはなると思った。3カ月後、さっそく第1回目の年金2カ月分が振り込まれた。その後に届いた通知書をさっと目を通したところ、3万6000円と書かれてあったので、第1回目のお知らせなのだと思った。ところが、その翌月、年額2万1000円と記された支給額変更通知書が届いた。

「月額ではなく、年額?」

 その理由として、「最近1年間に受けられた賞与の平均額が変わったため、支給停止額を変更した」と書かれてあった。夫に聞いてみると、たまたま勤務する会社の業績がよかったために、社員全員に一律3万円が賞与とともに支払われたという。言わば大入袋みたいなものだ。「たった3万円増えただけで、なぜ年金が年額20万円も減らされるのか、どう考えてもおかしい」と、私たちは年金事務所に駆け込み、前回対応した相談員に相談した。

知らぬ存ぜぬの相談員

 その担当者は、「これがこうなって、こうして」と小難しい計算式を説明するだけで、なぜ受給額が1ケタ減ってしまったのかの説明がない。押し問答をしているうちに、どうやら前回提示された支給見込額22万円は、高年齢雇用継続給付金抜きで算出された金額だということがわかってきた。この給付金は、定年後も働き続ける65歳未満の人が60歳時点に比べ賃金が75%未満に低下した場合にハローワークから支給される。

「あのときはまだ、ハローワークの金額が決定していませんでしたから」

「決定していないって、ハローワークからのお金はこの2年間、2カ月に1度、ずっと同じ額ですし、私はあなたに高年齢雇用継続給付支払決定通知書を提出しましたよ」

 年金手続時、私は通知書を提出したものの、彼女は黙って返してきただけで、何の説明もなかったのだ。

「ハローワークの分は労働保険が担当部署で、年金は社会保険が担当部署で組織が違うので、こちらとしてはハローワークの分を把握することは難しいんです」

 私はげんなりした。これが悪名高いお役所の縦割り行政か。

「受給者の立場になって考えてくださいよ。年22万円もらえると思っていたのが、2万円になったと言われたらショックですよ。『これにはハローワークからの金額が入っていないので正確な数字は提示できませんが、次回からは、おそらくこのくらいには減ると思います』みたいな説明があってもいいんじゃないですか?」

「……」

 私たちの指摘に、相談員は高年齢雇用継続給付の説明がなかったことを渋々認めたが、収まらない夫は、「説明はちゃんと文書に書いて、送ってくれ」と申し出た。

「厚労省は巨大組織」と上から目線

 後日、私にも見落としがあったことに気づいた。3万6000円と書かれた通知書は、第1回の支払い通知ではなく、「高年齢雇用継続給付などを受けたため年金の一部の支払いを停止」した変更通知書で、年額の数字だった。第1回目の支給額とほぼ同額だったので、数字しか見ていなかったのだ。年額2万1000円の通知はその次に送られてきたことになる。だとしても、ハローワークの説明がなかったことに変わりはない。

 年2万円程度の少額なら年1回でもいいのに、夫の口座には律儀にも2カ月に1度、1800円弱の振込がある。振込代がムダなのではないかとも思う。

 その後、年金事務所の相談員から文書が送られてきた。「組織が異なることによりスムーズにデータが流れない」と言い訳した後、「各年金事務所には意見書を投函する箱があります。お客様が声を上げることにより改善されると思います」と書かれてあった。

 さらに、「厚労省について新聞に出ておりましたので、いかに巨大な組織であるかをご理解できると思います」として、2018年8月19日付日本経済新聞記事のコピーが添付されていた。厚労省が肥大化し、年金、医療、介護、子育て、労働などの幅広い業務を抱えており、職員にも無理が生じているという内容の記事だった。今回の問題は、情報が行政組織間でスムーズに共有されないことに起因しているのだが、年金事務所としては情報が不足しているのであれば、その補足説明をするべきだったのではないか。この相談員は、本心では自分のせいではないと思っているようだ。

わかりにくく、説明不足の年金体制

 最近、「年金はいつからもらえばトクか」をテーマにしたテレビ番組が増えた。寿命の問題もあるので一概にはいえないが、どうやら国民年金など年金額が少ないケースでは、働いて生活を維持できるのであれば繰り下げたほうがトクになるらしい。番組を見ているうちに「しまった!」と私は思った。夫婦ともにすでに厚生年金をもらっているため、もう繰り下げることができなくなったのではないかと。

 慌てて調べてみると、65歳までに受給する厚生年金は「特別支給の老齢厚生年金」といって、65歳から受給する厚生年金とは別物だった。繰り下げができるのは65歳からの年金だけということで、ひとまずほっとした。しかし、なかには「繰り下げるとトク」という情報を勘違いして、「特別支給の老齢厚生年金」の受給手続をしない人も少なくないと聞く。

 最近では、働く意欲を削ぐとして問題視されている在職老齢年金については、政府が制度を見直す方針を固めたとの報道もあるが、まだ不透明だ。昨年には、日本年金機構から年金受給者のデータ入力業務を委託された情報処理会社が契約に反して、中国の業者に再委託などをしたために、中国に個人情報が漏洩するという不祥事も発覚している。

 とにかく、年金制度がわかりにくいにもかかわらず、年金機構は説明不足。しかも、ときおりミスも露呈する。私たちが泣きを見ないためには、多少の勉強も必要になってくるようだ。

(文=林美保子/フリーライター)

林美保子/ノンフィクションライター

林美保子/ノンフィクションライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、執筆活動を開始。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)、『DV後遺症に苦しむ母と子どもたち』(さくら舎)。

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