財務省、年金支給開始68歳に引き上げ「検討」報道…引き上げはあり得ると考える理由
年金支給開始年齢が68歳に?
4月11日に行われた財務省の財政制度等審議会の分科会において、社会保障の改革案が提示されました。そのなかで医療費の抑制と併せて、年金支給開始年齢の繰り下げということが提起されています。具体的なシミュレーションの案のなかで68歳にした場合、というのがあるため、報道では68歳への引き上げが検討されているという書き方がされています。
まず事実関係から考えてみますと、財政制度等審議会というのは、財務省に付属して設けられている財務大臣の諮問機関で、基本的な財政制度や各年度の予算のあり方などについて重要な勧告や提言を行うという役割を持っています。6月に策定される予定の財政健全化計画のなかにおいて、社会保障費の増大をいかに抑制するかという提言を盛り込むために議論されたもののまとめといって良いでしょう。
ただ、これはあくまでも財務省が財政上の懸念から作成したもので、実際に年金制度を管掌しているのは厚生労働省ですから、この提言でもってただちに支給開始年齢が繰り下げられるというわけではありません。ただ、厚生労働省が5年に一度行っている年金の財政検証、直近では平成26年に実施された検証のなかで年金支給開始年齢を繰り下げた場合のシミュレーションが出ていますので、それらの数字も踏まえた上での財務省の資料ということになるでしょう。
別に両者が対立しているというわけではありませんが、年金の原資は厚労省が管轄の社会保険料と財務省が管轄する税金の両方から出ていますから、財務省としても口を出すのはある意味当然だといえます。ただ、年金支給開始年齢は60歳から65歳までの引き上げがようやく完了しようとしているところですから、ここからただちに68歳とか70歳まで繰り下げられる可能性は少ないでしょう。マスコミはややもすれば国民的に関心の高い年金問題をセンセーショナルに取り上げる傾向がありますが、あまり短絡的に心配する必要はないと思います。
将来は繰り下げが起こり得る2つの理由
さて、ここからが本題です。では今後は年金支給開始年齢の繰り下げはないのか? ということになると、私が考える答えはノーです。すぐに実施されることはないと思いますが、いずれその可能性はあります。その理由は2つあります。