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2023.07.05 10:26
2018.05.19 16:45
大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」
財務省、年金支給開始68歳に引き上げ「検討」報道…引き上げはあり得ると考える理由
ただ、私が思うのは、繰り下げよりも「給付の抑制」を決められた通りにしっかりやることのほうが先だということです。04年の年金財政検証で決まったマクロ経済スライドは長らく、デフレの影響による物価の下落と厳密に適用することを躊躇ってきた政治家の思惑もあり、実際に発動されたのはようやく15年になってからでした。しかしながらこの仕組みを活用することで、給付額を抑制する効果は大きいといえます。また、働いて高収入を得られる人であれば給付の見直しも考えるべきでしょう。事実、冒頭に出てきた「財政制度等審議会」の資料においても、一定以上の高収入の高齢者への給付の見直しについて触れられています。
起こり得る年金の繰り下げに備えて考えておくべきこと
したがって、すぐに68歳や70歳への繰り下げはないといえるものの、将来を見据えれば可能性はあるし、その対策は考えておくべきと言えるでしょう。対策としては大きく2つあります。
まず、ひとつ目は働けるうちはできるだけ長く働くことです。現在でももし70歳まで働いて年金の支給開始を自主的に65歳から70歳へ繰り下げると、その後の給付額が生涯にわたって42%増えます。どんな資産運用よりも高い利回りを実現できる可能性があるわけですから、70歳まで働くことを目標に考えるべきでしょう。仮に70歳でリタイアしたとしても、平均寿命まではあと11年あります。そう考えれば支給開始年齢が上がっても心配することはありません。
2つ目は自分自身での老後の備えを手厚くしておくことです。最近では老後の資産形成に向けて税制が優遇されているiDeCo(個人型確定拠出年金)のような制度もありますし、会社員と違って厚生年金のない自営業者は、その分多めに積み立てて将来に備えることのできる「国民年金基金」や「小規模企業共済」といった制度もあります。こうした制度はいずれも自助努力の部分です。現在の年金制度を否定したり悲観したりするのではなく、あくまでもベースに置きながら、プラス個人の自助努力の部分を積み上げていくことが大切といえるのではないでしょうか。
(文=大江英樹/経済コラムニスト)
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