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1個3億円相当の価値があるタマゴが開発…バイオ医薬品製造の常識を根底から覆す

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何気なく食べているタマゴが遺伝子書き換えで驚くべき価値に!(撮影=筆者)

 タマゴは完全栄養食品と呼ばれることがあります。タマゴには主要栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質が豊富に含まれ、さらにビタミンやミネラルもバランスよく含まれているためです。

 私たちの体も豊富なタンパク質でできていますが、それらは全身の細胞の中で遺伝子を設計図として、アミノ酸から合成されます。このときに20種類のアミノ酸をタンパク質の材料として使用するのですが、そのうちの9種類は体内で合成することができないため、食品として摂取しなければ生きていくことはできません。この9種類のアミノ酸のことを必須アミノ酸といいます。タマゴは必須アミノ酸9種類すべてをバランスよく含んでいる、ほぼ唯一の超完全食品なのです。

 最近の研究では、卵黄に含まれるホスファチジルコリンという物質が、がんやアルツハイマー病のリスクを下げる可能性があるとして注目されています。一方で、タマゴはコレステロールを含むので敬遠されがちですが、コレステロールも生命には必須の物質です。しかも、タマゴに含まれているコレステロールは1個当たりわずか0.2グラムなので、常識外れな量を食べない限りは、コレステロールの悪影響よりも、そのほかの成分のメリットのほうがはるかに大きいです。

3億円の価値を生み出すタマゴも?

 さて、そんな完全栄養食品のタマゴですが、スーパーに行けば1個10円から20円程度で購入できる、とても安価な食品です。しかし、世の中には1個3億円もの価値があるタマゴがあることをご存じですか?

 先日、コスモ・バイオ株式会社が「『鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質製造技術』を利用したタンパク質受託製造事業の開始のお知らせ」と題したリリースを発表しました。鶏卵って、もともとタンパク質でできているのではないの? と思ってしまいますが、実は最新の遺伝子書き換え技術を応用した、日本の最新科学技術の結晶なのです。

 生物の遺伝情報は生殖細胞(雄であれば精子、雌であれば卵子)の細胞の中に封じ込められて子孫に伝えられます。生殖細胞の中には精子、卵子それぞれに全身をつくり出す設計図一式が揃っており、受精によって両遺伝子が混ぜ合わさることによって、子どもの遺伝子が完成します。

 近年の遺伝子研究の急速な進歩により、遺伝情報を自由に書き換えることができるようになりました。そして、ついに国立研究開発法人産業技術総合研究所は遺伝のメカニズムと遺伝子書き換えの技術を融合させ、鶏卵の中でバイオ医薬品の成分を大量につくることに成功しました。実験では、1個の卵で最高3億円相当の薬の成分ができたということです。

 バイオ医薬品は遺伝子組み換えなどでつくるたんぱく質などの医薬品で、がんやリウマチなどで治療薬が登場しています。治療効果が高いものの医療費が高額となるのが問題で、安価な製造法の開発が求められています。

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インターフェロンの構造式(「Wikipedia」より)

 コスモ・バイオとの共同研究で、鶏卵の白身の一部を薬の成分に変える遺伝子書き換えをニワトリに施しました。精子のもとになる始原生殖細胞の遺伝子を書き換え、卵白のたんぱく質の主成分であるオボアルブミンをつくる遺伝子を壊し、その代わりにがんや肝炎の治療に使われるたんぱく質インターフェロンをつくる遺伝子を書き込んだのです。

『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』 野菜を食べると体によい。牛肉を食べると力が出る。食べ物を食べるだけで健康に影響を及ぼし気分にまで作用する。なんの変哲もない食べ物になぜそんなことができるのか? そんな不思議に迫るべく食べ物の体内動態をちょっと覗いてみよう。 amazon_associate_logo.jpg

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