神戸市立東須磨小学校における教員間いじめ問題で、加害教師4人のうちの1人である30代の男性教師が、男女の後輩教師を「お前ら、今日やらんかったら知らんぞ」などと脅迫し、性行為を強要していたと「週刊文春」(10月24日号/文藝春秋)で報じられた。
しかも、その証拠画像を撮影して送るよう指示したのだが、指示した送り先が、動画が拡散している「激辛カレー強要事件」の被害者で、最近兵庫県警に被害届を出した20代の男性教師だという。「(証拠画像は)汚いからオレの携帯には送ってくんなよ」と命じて、被害教師の携帯に画像を送らせたらしい。
後輩教師に性行為を強要した男性教師は、いじめ行為を繰り返していたようだ。被害教師が社会人になって初めて購入した新車の屋根に土足で立ったのもこの教師だ。そのうえ、足でドアを閉めたり、車内にたばこの吸い殻が入ったペットボトルの水をこぼしたりしている。また、女性教師にひどいあだ名をつけ、「お前、嫌いやん、マジで無理や」と暴言を吐いたり、プライベートや胸のサイズを執拗に尋ねたりもしている。
この加害教師の高校時代の同級生によれば、反抗してきそうもないクラスメイトに「ウンコまみれ」というあだ名をつけ、周囲にもそう呼ばせようとしていたという。また、偏差値の低い私立大学に推薦入試で合格したクラスメイトが教室に入ってくると、「負け組が来たぞ」とつぶやいたこともあるらしい。
一連の報道が事実とすれば、この加害教師は、他人が困ったり苦しんだりする姿を見たいというサディスティックな欲望、そして他人が恥ずかしがったり嫌がったりすることを強要して自分の力を誇示したいという支配欲求が強そうだ。しかも、サディスティックな欲望と支配欲求を満たすことに快感を覚え、いじめをやめられなくなっている可能性が高い。
低い自己肯定感
このようにいじめを繰り返す人は、虐待を繰り返す人と同様に、多くの場合自己肯定感が低い。自己肯定感が低いと、自分より弱い者を攻撃して、自分のほうが優位に立っていると感じることによってしか、自らの存在価値を確認できないのだ。
自己肯定感が低いのは、さまざまな原因によるが、この加害教師の場合、学歴が影響しているように私には見える。彼は高校時代「東大を目指す」と豪語していたようだが、二浪の末に入学したのは大阪教育大学だった。
国立大学を出て小学校教師になり、安定した収入を得ているのだから、それなりに恵まれた人生のように傍目には見えるが、本人としては不本意だったのかもしれない。その結果、欲求不満がたまり、鬱憤晴らしのためにいじめを繰り返した可能性もある。
「ゲミュートローゼ(情性欠如者)」の可能性
今回の教員間いじめ問題をめぐる保護者説明会が10月16日、東須磨小学校で開かれ、加害教師4人の謝罪コメントが読み上げられた。だが、心から反省しているのか、はなはだ疑問である。
というのも、とくに後輩教師に性行為を強要した男性教師といじめの主犯格である40代の女性教師は、「ゲミュートローゼ」である可能性が高いからだ。「ゲミュート」とは、思いやり、同情、良心などを意味するドイツ語である。このような高等感情を持たない人を、ドイツの精神科医、クルト・シュナイダーは「ゲミュートローゼ」と名づけたわけで、「情性欠如者」と訳される。
「情性欠如者」は冷淡かつ冷酷であり、他人に対して陰険で残忍なことを平気でする。しかも、罪悪感を覚えず、反省も後悔もしない。おまけに、「情性欠如者」の目立つ特徴として、教育によって改善することが不可能である点をシュナイダーは挙げている。
したがって、被害教師は謝罪コメントにだまされてはならない。もちろん、被害届を取り下げるなど、もってのほかだ。加害教師には司法の場で裁きを受けさせ、二度と教壇に立つことができないようにすべきである。
(文=片田珠美/精神科医)