今年8月、JR東海、JR西日本、JR九州の3社は新幹線に持ち込む大型荷物を事前予約制にすると発表した。2020年5月から導入する予定で、予約なしで持ち込んだ場合は1000円の手数料が発生するという。
なぜ今、新幹線の大型荷物を予約制にするのか。また、トラブルなどが発生する可能性は。鉄道ライターの枝久保達也氏に話を聞いた。
“早いもの勝ち”だった最後部の空きスペース
新幹線に持ち込む大型荷物の事前予約制は、来年の東京オリンピック・パラリンピックで大きな荷物を携える利用者が増えることを見込み、混乱を避ける狙いがあると考えられる。
具体的には、縦・横・奥行きの3辺の合計が160センチを超える荷物が予約の対象となる。券売機やインターネットで指定席とセットで予約が必要となり、先着順で追加料金はかからないが、予約せずに対象の荷物を持ち込むと手数料1000円がかかってしまう。予約できる数は「のぞみ」で40席ほどだという。
指定席車両の最後部座席の後ろが専用の荷物置きスペースとなり、23年度からは、東海道新幹線「のぞみ」「ひかり」といった一部車両の洗面所を改修し、盗難防止機能付きの荷物置き場も設置するという。
新幹線に馴染みがないとイメージするのが難しいかもしれないが、最後部座席後ろのスペースは“早いもの勝ち”で大きな荷物が置かれることが多く、過去にはトラブルもあったという。
「これまでは“単なる空きスペース”で、誰のためのものでもない共用部分という扱いでした。持ち主不明の荷物が置かれているのはセキュリティ上問題があるため、JR東海は『誰のものかわからない荷物は不審物として扱う』と注意する一方、荷物が入りきらないなどの事情で利用を希望する場合は車掌に申し出てほしいと呼びかけていました。また、最後部の座席とセットになっているスペースだと思い込み座席を指定した乗客が、荷物を置きに来た乗客とトラブルになったという話もあります」(枝久保氏)
逆にトラブルの火種となる可能性も?
これまでは定義されていなかった空きスペースを制度化したかたちになるが、乗客にとってはどんな影響があるのだろうか。
「JR東海は、現状の利用状況に見合った席数数を確保したとしていますが、満席の場合は前後の列車を利用するよう案内しています。予約せずに持ち込んだ人は1000円徴収されますが、これが事実上の『特大荷物持ち込み料金』になってしまうことも考えられます。また、自由席は対象外なので、自由席で“荷物スペース”を利用していた人は実質的に値上げになります。
一番の懸念材料は訪日外国人への周知です。彼らが利用する割引乗車券『ジャパン・レール・パス』では『のぞみ』は利用できないため、『ひかり』に利用が集中する傾向にあります。『ジャパン・レール・パス』の指定席予約は来日後ですから、案内と誘導がうまくいくのか心配です」(同)
新制度の成否は、外国人客にスムーズに伝わるかどうかがカギとなりそうだ。五輪期間中は現在よりも多くの外国人客が大きな荷物を携えて新幹線に乗ることが予想されるため、うまく案内できなければ日本人の乗客ともトラブルになりかねないだろう。