台湾で2018年10月、特急列車「プユマ号」が脱線し18人が死亡した事故で、列車を運行する台湾鉄路管理局(台鉄)は4月末、車両製造に瑕疵(かし)があったとして、主契約企業の住友商事に賠償を請求する文書を送った。住商を通じ、製造元の日本車輌製造の責任を問い、賠償請求額について日本側と協議する。
行政院(内閣)の事故調査チームは事故の直接の原因について「運転士が制限速度を上回るスピードで現場の急カーブに突入。曲がり切れずに脱線した」と認定した。運転士は当時、コンプレッサー(空気圧縮機)の故障による動力不足を解消しようとして、速度管制装置を切っていた。
台鉄は日本車輌が製造した車両のコンプレッサーなどに不具合があったと主張。速度をオーバーした際に自動的に減速する「列車自動制御保護システム」(ATP)の配線が完全に接続されていなかったことや、整備不良によるコンプレッサーの不具合で列車の運行に支障を来したことが「事故の遠因になった」とし、製造責任を追及している。ATPを運転士が勝手に切った際、運転指令にこれを知らせる機能が作動しなかったと発表。図面で確認したところ、情報を伝える配線が接続されないまま出荷されていた、とした。
台鉄は11年、プユマ号用車両136両を約300億円で発注。14年には16両を約33億円で追加発注した。台鉄は日本企業連合から納付された契約保証金約4億2000万台湾元(約15億1300万円)が手元にある。賠償金額から、これを差し引く方針。賠償請求額がいくらかなど、具体的な情報は開示されていない。
18年10月21日、台湾東部の在来線で大規模な脱線事故が発生した。特急列車「プユマ号」(8両編成)の全車両が脱線、このうち5両が横転した。乗客366人のうち18人が死亡、187人がけが(うち10人が重傷)という大惨事となった。
脱線した「プユマ号」は、日本製の特急型電車TEMU2000型である。台鉄が東部路線の輸送力強化のために導入。日本車両と住友商事が受注した。
TEMU2000型は、車体を傾けることで乗り心地を維持したままカーブを比較的速く回れる装置を搭載しているのが特徴だ。
台湾当局は、事故は列車の速度超過が原因としている。運転士は事故前に運転指令に無線でATPを切ったと報告していた。そのため、日本車輌は「通知機能が働かなかったことと、事故とに因果関係はなく、制御機能自体にも問題はない」としている。それでも「設計当事者の確認不足だった」ことは認め、再発防止に努めるという。
日本車輌は台鉄に計152両19編成分を納入。ATPは1編成につき両側の先頭車両に付いており、そのすべてに配線ミスがあった。