消費増税に伴う軽減税率の導入などで、小売り・サービス業界は対応に追われた。メディアも業界の混乱ぶりや税体系のわかりにくさを繰り返し報じてきた。もっとも、景気がパッとしないこの時期になぜ増税するのかという理由や、増税分の使途など根幹的なテーマに直接言及する報道は少なかった。
消費増税に伴う最大5%のポイント還元の原資として政府は2798億円を2019年度予算に計上しているが、これで景気を下支えできる保証はない。今後、物価にどのような影響が出るのかも気がかりだ。そこで全国の物価水準を改めてチェックしてみた。データは総務省の小売物価統計調査(構造編)の2018年結果だ。
まずは都道府県別の物価水準(物価地域差指数=総合)をみてみよう。上位5都府県は次の通り。全国の物価水準=100である。
(1)東京都 104.4
(2)神奈川県 104.3
(3)埼玉県 101.1
(4)京都府 100.7
(5)千葉県 100.5
下位の5県は次の通り。
(47)宮崎県 96.0
(46)鹿児島県 96.1
(45)群馬県 96.3
(44)福岡県 96.6
(43)長野県 97.1
(42)奈良県 97.1
京都府を除き、人口の一極集中が止まらない首都圏4都県が上位に入った。東京都と神奈川県は、物価の10大費目(食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費)のうち、「住居」の寄与度(押し上げ要因)がそれぞれ2.21、1.56と高いのが特徴だ。
物価水準がもっとも高い東京都は、もっとも低い宮崎県に比べて8.8%も高い。上位10まで対象を広げると、8位に山形県、9位に長崎県、10位に北海道が入ってくる。この3道県は「光熱・水道」が物価を押し上げている。一方、下位グループの宮崎県、福岡県は「食料」が、鹿児島県、群馬県では「住居」が、それぞれ水準を下げる要因となっている。
10大費目別で物価水準の高低差がもっとも大きいのは「住居」だ。もっとも高い東京都の133.0に対し、もっとも低い愛媛県は82.7。東京都の水準は愛媛県の1.61倍となっている。消費税の税率は全国一律で2%アップだが物価水準にはずいぶんと格差がある。首都圏住民は痛税感も大きい。