オンワード、600店閉鎖・赤字転落の英断…アパレル業界の旧態依然たる経営と決別
1.全店舗の2割にあたる約600店舗を閉鎖
10月4日にオンワードホールディングス(HD)が、グループ全体の約3000店舗の2割閉鎖を柱とした構造改革を進め収益性を高めると発表して、約1カ月半が過ぎた。2020年2月期の業績予想を下方修正し、最終損益は従来の55億円の黒字から240億円の赤字へ引き下げた。売上高は据え置きながらも、営業利益は12億円の黒字に下方修正。一時大きく下げた株価は回復し、11月の初週には20%も戻した。構造改革案は支持されたともみえるが、同社の課題をいくつか検証してみたい。
まず大きな課題は、現状の百貨店をメインとするビジネスモデルである。子会社のオンワード樫山の百貨店売上比率は66%といわれており、14年2月期から5年連続で売上は減少し、この間で22.8%減となっている。百貨店売上の減少も当然、一因であるが、これは1990年代から続く傾向であり、今さら言い訳にはならない。
同業の山陽商会、レナウンも売上減と赤字決算に沈んでいる。黒字決算を続けるオンワードは、百貨店側からの依存度もより高くなっていた。大量店舗閉鎖にもっとも衝撃を受けたのは、都心以外の百貨店であろう。ファッションは百貨店にとって、食料品などと違い利益率が高くリスクも少ない“おいしい商品”である。閉鎖が続く地方百貨店にすれば、この商品供給は命綱である。
元来、アパレル企業が売上が低い地方百貨店へ出店する際は、都心にある同じ百貨店グループの旗艦店で売上が高い売場を確保してくれるという暗黙の了解がなされてきた。セット販売みたいな取引形態だが、1990年初頭から始まったこうした形態が、百貨店全体の売上減が続いてもなぜ変化・進化しなかったのだろうか。値入率(店頭の販売価格と仕入価格の差額の販売価格に対する比率)が10ポイント前後まで下がっており、百貨店側が己の努力を放棄して仕入れ側に一方的な条件変更を受け入れさせたとみられても仕方がない。
一方、供給側はコスト率を下げて利益率の確保を試みる。新商品はますます価格と商品の質が乖離し、魅力がなくなるという悪いスパイラルに落ち込んでいた。そうしたなか、今回オンワードHDは百貨店売上比率を将来50%まで下げると発表した。