元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな税金は「源泉所得税」です。
大阪のたこ焼き店が税務調査を受け、所得隠しを指摘されたと報じられています。所得隠しなので脱税とは異なりますが、重加算税を賦課されており、不正の方法も明らかになっています。
報道によると、ミシュランガイドにも掲載された大阪・梅田の人気たこ焼き店『はなだこ』の運営会社と関連会社の計3社が大阪国税局の税務調査を受け、2018年4月までの5年間で計約1億4000万円の所得隠しを指摘されたとのことです。
重加算税を含む追徴税額は約8000万円。調査を受けたのは大阪府守口市の『芭食サービス』『翠松フードサービス』『新紀』とされています。レジを操作して、売上記録の一部を消去する手口で法人税や消費税の支払いを免れ、さらに従業員の給与にかかる源泉所得税の一部も納めていなかったと報じられています。
芭食サービスは、介護事業をメインで行っている、従業員が100名以上の会社です。16年に、「おおさかぐるり」と「はなだこ」の営業権を翠松フードサービスに譲渡していました。芭食サービスの代表取締役と翠松フードサービスの代表取締役は姓が同じなので、ふたりには血縁関係があるのかもしれません。
仮に、たこ焼きの事業だけで所得隠しがあったとすると、16~18年に翠松フードサービスで、14~16年に芭食サービスで不正があったと考えられます。
営業権を譲渡して社長が変わっても、継続的に同じ不正が行われていたとなると、店長などの店舗責任者が経営者側の指示で行っていたか、社長自らが店舗に立っていたと考えられます。
35%の重加算税+延滞税
今回の不正の内容は、レジ記録の一部を消去して行う、売上の除外でした。レジの打ち間違い発生時に行われる取り消し処理をすれば、容易に売上を消去することができます。これを意図的に行っていたとすれば、ミスでは許されない、純然たる不正です。
売上を除外すると法人の所得が減るので、法人税を免れることになります。さらに、売上には客から受け取る消費税が含まれています。この消費税は、法人の利益になるのではなく、国や地方自治体に納めることになります。よって、除外していた売上に関係する消費税を免れていたことになります。
さらに、除外していた売上はどこに行ったのでしょうか。おそらくですが、記録に残らない現金の売上を中心に除外していたと思われます。その分の現金は、不正の中心となった人物の個人的な蓄財や支出に当てられるのが一般的です。
これが社長の懐に入っていたとすると、通常の役員給与として損金に算入することができません。すべて損金不算入、つまり経費にできなくなります。しかし、源泉所得税は納める必要があるので、加算税や延滞税を賦課されて追徴されたはずです。
さらに、従業員の給与から天引きした源泉所得税も、一部納めていなかったようです。この規模の会社で税理士がいなかったとは考えづらく、どのような携わり方をしていたかも気になります。
不正をすれば、35%の重加算税が賦課されます。さらに、延滞税という利息も発生します。これらは、最初から正しく申告していれば発生しなかった支払いです。除外した売上など、税務調査があればすぐになくなってしまう。ビジネスを確実に成功させるのであれば、不正のない正直な処理が懸命です。
なお、「はなだこ」がミシュランガイドに掲載されていたのは過去のことで、現在、たこ焼き店として掲載されているのは、大阪市中央区の「たこりき」のみとなっています。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)