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村井英一「お金の健康法」

中国、新型コロナ以上の“時限爆弾”…中国バブル崩壊→日本の景気後退入りが現実味

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
中国、新型コロナ以上の“時限爆弾”…中国バブル崩壊→日本の景気後退入りが現実味の画像1
「gettyimages」より

 中国で始まった新型コロナウイルスの広がりで、中国はもとより世界経済の先行きが不透明になりました。この感染が、どれくらいで収束するのかはまったくわかりません。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年のMARS(中東呼吸器症候群)は7~8カ月で収束しています。そのまま当てはめると、今年の7~8月ぐらい、ちょうど東京オリンピックの開催時期になります。しかし今回のものは、SARS、MARSに比べて重症化する割合は低いものの、感染率が高いとか、本人が気づかない潜伏期間でも感染するなどといわれており、過去を参考にできるとも限りません。

先が読めない経済への影響

 ただ、1つだけいえることは、SARS感染があった2003年と比べて、世界経済に占める中国の存在がかなり大きくなっていることでしょう。それだけに、中国だけに留まらない影響が心配されます。世界全体のGDPに占める中国のシェアは、2003年の頃は約4%でしたが、現在は15~16%にもなっています。これだけ大きくなっていると、他国に与える影響は小さくありません。中国はすでに、「世界最大の生産地」であり、「世界有数の消費地」となっています。

 株式相場は、1月末に急落しましたが、すぐに元に戻しました。しかし、2月後半からまた大きく下落しました。市場関係者も、どの程度の影響になるのかわからず、右往左往している状況です。終息時期は感染症の専門家ですらわからないのですから、その予想を基に投資判断するのは危険なことです。比較的短期で終息する可能性も、長期に続く可能性もあわせて考える必要があるでしょう。また、すぐに戻す(再び上昇する)可能性もありますが、安心はできません。

これを機に景気後退に突入も

 このところの日本の株式市場は、アメリカ市場の動きにつれて動いている状況ですが、中国経済の影響は日本のほうが大きく受けます。日本ではさっそく観光業で影響が出ていますが、生産の面でも消費の面でも中国への依存度は小さくありません。ちょうど先日、昨年10-12月の実質GDP成長率が、年率でマイナス6.8%だったと公表されました。昨年10月の消費税引き上げと台風などの自然災害による影響ですが、それでも事前の予想を大きく超える悪化です。続く今年1-3月も大きなマイナスになると、本格的な「景気後退」となります。

 アメリカに比べると、ドイツを中心にしたヨーロッパのほうが中国との結びつきが強くなっています。まだ景気の回復力が弱いところに中国への輸出が止まり、景気の低迷が続く可能性があります。

 一方、アメリカはそれほどには大きく影響を受けなさそうです。もちろん、株式市場に影響はありましたが、割と早く回復するでしょう。米中貿易摩擦に象徴されるように、中国からアメリカへの輸出は増えていますが、アメリカから中国への輸出はそれほど大きくはありません。ちょうど中国製品に制裁関税をかけていたところですので、すでに制約があります。今回のダメージは、日本をはじめとするアジア地域は「大」、ヨーロッパは「中」、アメリカは「小」といったところでしょうか。

発火直前(?)の時限爆弾

 実は、中国には新型コロナウイルス以外にもう1つ大きな“時限爆弾”を抱えています。それは「バブル崩壊」です。中国は株式市場では、2007-8年と2015年に大きなバブルとその崩壊を経験して、その後は低迷が続いています。そのため、今がバブルという印象があまりないのですが、企業融資が増加しており、かつてないほどにバブルが膨らんでいます。ここ数年はそれが不動産投資に向かい、地価が上昇しました。

 金融機関による国営企業への安易な融資が拡大し、そこに規制が入ると高利回りの「理財商品」という形での資金調達が増えました。銀行を通さないので「シャドーバンキング」と言われていますが、3カ月や6カ月など短期の借り換えを繰り返す、不安定な融資です。

 世界金融危機が起きた2009年以降、民間企業の借り入れが急増し、今では民間非金融部門の債務残高が国内総生産の2倍を超えています。かつて日本やスペインではこの水準を超えるとバブルが崩壊し、金融危機に直面しています。中国では農村部を中心に、返済が難しい不良債権の比率も増えています。公表されている数値だけでも危険な水準に達していますが、さらに中国の場合、公表データが信頼できない、という問題もあります。

 中国がバブルの状況にあることは、すでに2年以上前から指摘されていましたが、今のところは特に金融危機などは発生していません。要因がそろっても必ずしも危機的な状況が発生するわけではありません。しかし今回、新型コロナウイルスによる経済活動が停滞しており、これをきっかけにバブルが弾け、金融危機が発生することは十分に考えられます。

 現在、世界的な金融緩和で、世界経済は小康状態を維持しています。中国発で世界的な金融危機が起きてもおかしくはありません。これこそが経済的には、新型コロナウイルスによりももっと恐ろしい“時限爆弾”です。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

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Twitter:@coreca

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