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片田珠美「精神科女医のたわごと」

大阪、自粛要請拒否のパチンコ店、公表で満席に…強度のギャンブル依存症の“正体”

文=片田珠美/精神科医
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新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言下の東京(写真:AP/アフロ)

 大阪府の吉村洋文知事は4月24日、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく休業要請に応じない府内の大型パチンコ店6店舗を公表した。これを受けて、大阪市内の2店舗が25日から休業したが、他の4店舗については、25日正午の時点で要請に応じるとの連絡はなく、ほぼ満席の店もあるという。

 なかには、「開いている店を探して行く」「(店舗の公表によって)開いている店がわかり、かえってよかった」などと話す客もいるらしい。実際、開いている店を探して他府県まで“遠征”に出かける客も少なくないようだが、こういう客は依存症なのではないか。パチンコは「事業化されたギャンブル」にほかならず、ギャンブル依存症と考えられる。

 ギャンブル依存症、つまり賭博への熱中は、フロイトによれば、「かつての自慰衝動の代替物」である。両者の共通点として、フロイトは次の4つを挙げている。

1)   誘惑の抗しがたさ

2)   二度としないという聖なる決意が決して守られないこと

3)   とろけるほどの快感

4)   自分が破滅するのではないかという疚しき良心

 フロイトが引き合いに出しているのは、ドイツで賭博に熱中していたロシアの文豪ドストエフスキーである。彼は、賭博で勝てば、債権者によって投獄されずにロシアに帰国できるという口実を利用して、賭博にのめり込んでいた。だが、これは口実にすぎず、「賭博のための賭博」だったのだと、フロイトは述べている。

 たしかに、賭博の醍醐味は賭博そのものにあるように見える。私の外来に通院している生活保護受給中の患者のなかにも、月初めに生活保護のお金を受け取るやいなやパチンコ店に直行し、数日で使い果たしてしまう方がいる。その後生活が苦しくなったという理由で、「(翌月の生活保護の給付日まで)入院させてほしい」と頼む患者もいる。

 こういう患者が生活保護を受給するようになった理由を聞くと、競馬や競輪などのギャンブルに熱中し、「今度こそお金を稼ぐ」と言い訳して借金を繰り返したあげく、自己破産に追い込まれ、仕事も家族も失ったということが少なくない。だから、ギャンブルのせいで一文無しになったのに、またパチンコというギャンブルに熱中しているわけで、賭博そのものに快感を覚えるからこそ、全てを失うまでやめられないのだろう。

 この快感が、自慰行為から得られる快感につながるというフロイトの主張は、「なんでも性的なものにこじつける」と批判されるかもしれない。だが、フロイトが挙げている4つの共通点はさもありなんという感じで、説得力がある。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、力量のない政治家がいかに頓珍漢なことをするかも、日本にいかにパチンコ依存症が多いかも見事にあぶり出した。その点では、実に鋭敏なリトマス試験紙といえよう。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

ジークムント・フロイト『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの』中山元訳 光文社古典新訳文庫 2011年

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