推定320万人。この数字は、日本国内のギャンブル依存症者の数だ。
パチンコ、スロット、競馬、競輪、競艇などに依存するギャンブル依存症は、社会の潜在的な問題だ。本人が社会的な信用を失うだけならまだいいとして、ギャンブルで作った借金が家族に回ってくることも。その額は数千万円、中には一億円を超える例もある。自身の財産のみならず、家族の貯金や年金、自宅がなくなっても、やめられないのがギャンブル依存。こんな最悪の状況から抜け出す方法はあるのか。
特効薬なしの進行性「ギャンブル依存症」から立ち直る唯一の道
『やめられない ギャンブル地獄からの生還』 (箒木蓬生著、集英社刊)では、精神科医の箒木蓬生氏が、ギャンブル依存の実態、その地獄から這い上がった実例を紹介。2010年に書き下ろし単行本として刊行されたものだが、文庫化に際してカジノの危険性など最新情報が大幅加筆された。
著者いわく、ギャンブル障害に効く薬はなし。さらに、家族の対応で何とかなるものでもない。しかも、自然治癒もなく、進行性。自力ではどうすることもできないのが依存症と考えると、恐怖も感じる。ただし、ギャンブル地獄から生還する方法は存在する。それは、週1回以上の自助グループへの参加と月1回の通院だという。
自助グループは、患者が複数集まり、お互い支え合う形式をとっているもの。ギャンブル症者は、見ザル、聞かザル、言わザルの「三ザル」状態になっている。自分の置かれた悲惨な状態や家族の苦しみを見ない。他人の忠告や助言を聞かない。自分の気持ちを言わない状態だ。
けれど、自助グループは、全員がギャンブル症者なので、初めて参加した者に対して、責められるどころか「よく来てくれた」と全員が大歓迎してくれる。そんな雰囲気の中で近況報告や「ギャンブルをやめて、どういう良いことがあったか」など、その日のテーマを順に話していく。
自助グループに参加したギャンブル症者の率直な自分自身の話を聞き、自分との類似性に気づき、自分もギャンブル症者であると自覚する。責められることもなく、討論をするわけでもないので、自然と話を聞くことになる。自助グループでは、上手く話せなくても拍手が起こり、参加する人たちは真剣に耳を傾けてくれる雰囲気があるので、ここでは喋っていいのだ、と感じるようになる。こうして「三ザル」を克服し、ギャンブル地獄から抜け出すきっかけとなるのが、自助グループなのだ。
月1回の通院は、メンタルクリニックや精神科病院の外来が最適だという。自助グループの参加が続けられるかどうか、患者自身の悩みや家族としてわからないことなどを確かめることができる。
自助グループの参加と通院が、ギャンブル依存から脱却できる、おそらく唯一の方法だ。
本書を読むと、ギャンブル依存の悲惨さやそこから抜け出す難しさ、それでもそこから抜け出す方法があることがわかる。ギャンブル依存の実態を本書から読んでみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。