ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 六代目山口組などが自警団を結成
NEW

六代目山口組などが自警団を結成、コロナ禍で任侠道を貫く…そんなヤクザは「必要悪」か

文=沖田臥竜/作家
【この記事のキーワード】, , ,
六代目山口組、神戸山口組などが自警団を結成、コロナ禍で任侠道を貫く…そんなヤクザは「必要悪」かの画像1
人影が消えたコロナ禍の繁華街(写真はイメージ)

 ヤクザ、暴力団が「反社会的勢力」と位置づけられて久しく、もはや「必要悪」ではないといわれることが多くなった。必要悪を「悪い面もあるが、社会としては、ないよりあったほうがいい存在」とした場合、果たしてヤクザは、もはや必要悪でもないのだろうか。

 社会通念上、ヤクザが「絶対悪」と明確に定義されるのならば、その存在の是非を論じるまでもない。だが、現在、社会も政治もヤクザの存在を許容している。どれだけヤクザに対する厳罰化が加速しても、それはヤクザの行為を締め付けるものであって、その存在自体を違法とはしていない。

 ヤクザが絶対悪で、存在すべきものではないという社会的合意があれば、権力は結社罪などを作り出し、ヤクザ組織を壊滅させるために動き出すことはできるだろう。海外では、マフィア組織を否定し、そこに身を置くことを違法としているケースもある。しかし、日本のヤクザは今も根絶されることなく存続できている。

 日本のヤクザ組織は、海外マフィアとは組織形態や体質が異なっている。あくまで一般論だが、海外マフィアは、組織内に血の結束があったとしても、外部に対しては違う。他者に対して、自己の利益のためなら、犯罪を犯すことに躊躇がない。だが、日本のヤクザ組織は、精神的な真髄を軸に形成されている。いうなれば、どの組織であっても、根底に流れるのは任侠道なのだ。それは現在、対立関係にある六代目山口組神戸山口組とにおいても、同じである。仁義を重んじ、自己犠牲を厭わず弱き者を助けるという任侠道を歩むべきと結成された組織を、社会は否定しないし、絶対悪とはしない。

 終戦直後の日本は、現在の「新型コロナウイルス問題」などとは比較にならないほどの国難に見舞われていた。治安においてもそうだ。だが、混乱する戦後、社会に一定の秩序が保たれたのは、ヤクザが組織的に自警団の役割を果たしていたからだ。その後も、現在に至まで治安維持の一端を担ってきたのは事実である。それは為政者のみならず、市民もが無意識に認めてきたのではないだろうか。ヤクザが抱える任侠道を求めてきたのだ。

 そして今、その任侠精神が全国各地で発揮されている。

 現在の日本は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、外出自粛要請がかけられており、飲食店を始め、どの企業や事業も経済的に大打撃を受けている。経済的に追い詰められれば、必然的に治安は悪化する。悪化すればするほど、犯罪が生まれやすい状態が生じてしまう。

 たとえば、現在、全国各地で休業店舗やオフィスへの空き巣の被害が多発し、コロナ問題を逆手にとった悪質な特殊詐欺が蔓延している。愛知県では、学校が臨時休校となったため、子どもが1人で自宅の留守番をしていたところ、2人組の男がガラスを割って侵入し、現金やクレジットカードを盗むという強盗事件まで起きている。そうした犯罪を少しでも防ぐために、ヤクザ組織が各地で立ち上がっているのは、あまり知られていない。

「現在、六代目山口組と神戸山口組は特定抗争指定暴力団に指定されており、警戒区域では組員が集まることができない。そのため、少人数のグループを何組もつくり、自警団として警戒区域内の見回りを続けている」(業界関係者)

 決して報道されることがない動きではあるが、これこそがヤクザにとっての義侠心というものなのだ。また、ある組幹部は、全国民に一律給付される10万円についても、このように語っている。

「当たり前だが、我々が受け取るわけにはいかない。どうしても受け取らなければならないのなら、どこかに寄付させてもらう」

 もちろん、ヤクザのなかでも考え方は人それぞれだろう。だが、多くのヤクザがこれまでも国難に対して立ち上がってきてみせたのは事実だ。震災が起きれば、たとえ売名行為だと揶揄されても、物資支援や炊き出しなどを行ってきた。年々、社会から排除されていく存在になっていたとしてもだ。

「困っている時に助け合うのは当たり前のこと。それを世間がどう取るかは関係がない。好きなように言えばよい」(某組織幹部)

 ヤクザが、必要悪か否かを論じる必要はないだろう。「困った時に助け合うのは当たり前のこと」。社会では希薄になりつつあるこの言葉をヤクザが持ち続ける限り、その存在がなくなることはないのではないか。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

六代目山口組などが自警団を結成、コロナ禍で任侠道を貫く…そんなヤクザは「必要悪」かのページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!