現在、特定抗争指定暴力団に指定され、組織的な活動を大幅に制限されている六代目山口組と神戸山口組。3月26日には、特定抗争指定暴力団の指定期間をさらに3カ月延長することが発表された。そうした状況下、両団体に対する当局の厳罰化は収まりを見せていない。
3月25日、児童福祉施設から200メートル以内での事務所の開設を禁じた暴力団排除条例に違反したとして、六代目山口組幹部である三代目織田組・高野永次組長らが逮捕された。三代目織田組の拠点は大阪市中央区となるのだが、特定抗争指定暴力団に指定されたことによって、三代目織田組の本部事務所が警戒区域となった。そのため、警戒区域外となる東大阪市に拠点を移したと見られていたのだが、今度はそれが暴力団排除条例に抵触したのである。
「問題となった事務所は、もともと六代目山口組の直系組織であった川下組(解散)の本部として使用されていた。その時代は、組事務所として使用していてもなんの問題もなかったんです。それがヤクザへの取り締まり強化が進み、さらに特定抗争指定暴力団に指定されたことで、新たに組事務所を開設したとみなされ、逮捕されることになった。確かに表札には、織田企業と表札が掲げられていたので組事務所としての役割を果たしていたのかもしれない。警戒区域内では事務所の運営はできないし、区域外では条例違反だとして逮捕されてしまう。ヤクザに対する厳罰化は日に日に強まっています」(業界関係者)
こうした危惧の声が出ている一方で、犯罪事情に詳しい専門家からはこんな指摘も出ている。
「現在、日本は新型コロナウイルス感染拡大問題を抱えています。それが奇しくも、一時的ながらヤクザに対する厳罰化の緩和につながる可能性もあるのではないでしょうか」
それはどういうことを意味しているのか。
「つまり微罪というか、今回のような条例違反などでは、検挙するほどではないと判断されることが多くなるはずです。4月11日には、東京拘置所内に収容されている被告の新型コロナウイルスへの感染が確認されました。日本ではまだですが、すでに海外では刑務所内での感染でクラスターが発生するケースが複数発表されています。刑務所や拘置所のみならず、矯正施設は人が密集しているために感染拡大リスクが高い。この時期、あえてそうした場所に感染の有無がわからない人間を新たに収容したり、密集度を高めたりするようなことを当局もしたくはない。特に、ヤクザの行動履歴は不透明な点が多く、こうした時期にも外出自粛要請など関係なく活動している者も少なくない。一般的な犯罪者より、感染リスクが高いと考えられても不思議ではありません」
もちろん、抗争事件や重大な犯罪を犯せば、現在の状況だからといって逮捕を免れるなんてことはないだろう。だが、例えば、特定抗争指定暴力団に指定された六代目山口組や神戸山口組では、組員が警戒区域の指定された地域で組事務所に立ち入っただけで逮捕される対象になるが、こうした微罪を犯した組員を収容することで新型コロナウイルス感染の二次災害を招く恐れがあるのなら、取り締まりが緩和される可能性は確かにあるのではないか。つまり、それは組員が活動しやすい環境が生まれることを意味し、そのことが現在停滞している山口組分裂問題にも影響していくことは十分に考えられるのだ。
新型コロナウイルス問題は、各方面で誰もが想像をしなかった影響を及ぼし続けているのである。
(文=沖田臥竜/作家)