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山口組分裂騒動、なぜ膠着化?…六代目山口組・髙山若頭の勢いを止めた「2つの敵」

文=沖田臥竜/作家
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高山若頭出所後、事態は大きく動き出していたが……(写真は、高山若頭出所日の府中刑務所)

 昨年10月に六代目山口組・髙山清司若頭が府中刑務所から出所して以降、同若頭の存在は分裂問題に大きな影響を与えてきた。組織内の引き締めを図ると同時に、対立する組織へは、決して妥協はしない姿勢を見せつけた。それは、一気に分裂問題を終息させるのではないかと思われたくらい強烈なものであった。

 だが、その勢いに歯止めをかけてみせたのが、1月に発効された特定抗争指定暴力団の指定だろう。これによって、六代目山口組神戸山口組は、組事務所や関連施設などの使用制限を受け、抗争どころか日常的な活動そのものにストップがかけられたのだ。その影響で分裂問題は長期化する見通しが出てきたのである。

「ヤクザ組織は本来、例え抗争中であっても、国内の大規模な行事やイベントがある際には、自主的に休戦し、相手を刺激するような行動は自粛するように通達が出される。特に今年は日本でオリンピックが開催される予定になっており、挙げ句、現在は新型コロナウイルス問題で日本全体が揺れている状態だ。そうしたなかでの抗争の激化は、六代目山口組も神戸山口組も望んでいないだろう。六代目山口組サイドとしては、こうなる前に一気に決着をつけ、分裂問題を終わらせたかったのではないか。だが、特定抗争指定暴力団に指定されて、そうもいかなくなった。逆にいえば、劣勢が囁かれ続けた中で、神戸山口組が耐え忍んだといえるのではないか」(業界関係者)

 この関係者が語るように、ここに来て抗争が収まっている理由として、現在の新型コロナに関する自粛ムードが関係しているのは間違いない。その上で、特定抗争指定暴力団指定の条文に設けられている、警戒区域の存在も大きいといえるだろう。

 現在、それぞれの主要組織が、組事務所の機能や幹部の自宅を警戒区域外に設けるという緊急措置を取っている。警戒区域外であれば、それらの施設を使用しての組織運営が可能な状況だ。だが、次にそれらの施設を含む区域で抗争事件などが起これば、そこも警戒区域に入ることになる。そうなると、また警戒区域外に拠点を移し直さなければならない。

 全国の至るところに傘下団体があるので、イタチごっこをしばらく続けることは可能だろうが、それは組織を疲弊させるだけで、決して分裂問題解決の一手とはならない。そんな背景からも、対立組織との衝突につながるような軽率な行動を取ることは、今は両陣営とも避けたいのではないかと考えられる。それが分裂問題の膠着状態につながっているともいえるだろう。

 ただ、まったく何も起きていないかといえば、そうではない。水面下では組員の移籍や小競り合いは存在しており、非公式ながら、政治的な解決案も浮上したのではないかという話が錯綜したこともあった。だが、やはり短期間で分裂問題を解決するような流れにはなっていない。それは、神戸山口組の中核組織の様子からもうかがえるという。

「神戸山口組の中核といえば、五代目山健組です。現在、山健組の中田浩司組長は、社会不在を余儀なくされています。だからといって、山健組が揺れているかといえば、そんな感じではない。中田組長は、六代目山口組系組員に対する殺人未遂罪など身柄を拘束されながら、当局の追及に対して今も黙して語らず。中田組長のそんな姿勢に感化されたのか、同じ留置場に勾留されている他の神戸山口組系組員たちも、心身ともに引き締まっているという噂が漏れ伝わってきたこともありましたし、中田組長不在のなかでも、五代目山健組は執行部を増員させて、組織内を強化させています。それを見ても、山健組ひいては神戸山口組は、長期戦をにらみ、反撃することを諦めていないといえるのではないでしょうか」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)

 そんな中、新型コロナ特別措置法が成立。まさに日本は緊急事態に陥りつつある。ヤクザたちが、自分たちの戦いに明け暮れていられる場合ではなくなった。山口組の分裂問題は、長期戦の様相を呈してきたといえるだろう。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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