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江川紹子の「事件ウオッチ」第151回

抗議の声相次ぐ「検察庁法改正案」…問題だらけ、不要不急の定年延長は即刻撤回すべき

文=江川紹子/ジャーナリスト
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法案をめぐっては、多くの人々がTwitter上で「#検察庁法改正案に抗議します」と声を上げ、ニュースでも報じられた(画像はNHKニュースより)

 検察官の定年を段階的に65歳へと引き上げる検察庁法改正案が衆院内閣委員会で審議入りした。主要野党が、森雅子法相の委員会出席を求めていたが、与党側は拒否。それに抗議して立憲民主党などの統一会派と共産党が委員会を欠席するなか、自民、公明、日本維新の会のみで質疑を強行した。

 政府は現行法の解釈変更という荒技で、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を行ったが、今回の法改正は、この解釈変更を追認するものでもある。各地の弁護士会などが、強く反発。週末には、この法案に反対する多くの人々が、ツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」などの声を上げた。

検察官が一般公務員と異なる理由

 少子高齢化がますます進み、年金の支給開始年齢も引き上げられるなか、公務員の定年を延長することについては、理解はできる。問題は、そのやり方の問題だ。

 現在の検察官の定年は、検察庁法で以下の条文で定められている。

〈第22条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する〉

 ここには、誰の、なんの恣意も入り込みようがない。年齢がその年に到達すれば、退官ということだ。黒川検事長の件が起きるまで、定年延長された検事はいない。

 今回の法案によれば、検事総長以外の検察官の定年が65歳に引き上げられる。ただし、現在の定年である63歳になると、検事正(地検のトップ)、高検の検事長(高検のトップ)、最高検の次長検事(検事総長に次ぐナンバー2)といった幹部職には就けない。いわゆる「ヒラ検事」に降格人事となる。

 ところが、「内閣」や「法務大臣」が認めた場合は、その地位にとどまることができる、というのだ。

 幹部職とヒラでは報酬も大きく異なる。「余人をもって代えがたし」といえば格好がいいが、要するに、時の政権の覚えがめでたければ幹部にとどまることができ、そうでなければ冷や飯食いを強いられる。これでは、政権の顔色をうかがう検察幹部が出てきてもおかしくない。

 安倍政権は、これまでも内閣法制局次長だった横畠裕介氏や近藤正春氏の定年を延長して局長に就かせたり、防衛省前統合幕僚長の河野克俊氏の定年は3度も延長したりしている。

 ただ、検察官の定年延長はそれとは性格を異にする。

 なぜなら、検察官は総理やその周辺の者さえ刑事訴追するだけの権限を持っており、それだけに独立性や政治的な中立性が求められるからだ。国会議員を逮捕するとなれば、地検、高検のトップの決裁だけでなく、最高検の指揮も得ることになる。そういう幹部たちが、時の政権に気に入られるかどうかでその処遇が大きく異なり、そのために政権の顔色をうかがうようでは、公正な捜査は期待できなくなる。

 現在も、自民党の河井案里参議院議員の陣営による選挙違反事件が、広島地検と東京地検特捜部によって捜査中だ。昨年4月頃に県議会議員や市議会議員に金を配っていたのが買収に当たる、と検察側は見ている。ゴールデンウイーク中にも夫妻の事情聴取を行った、と報じられている。

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