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佐藤信之「交通、再考」

JR北海道が検討した「上下分離」、ローカル私鉄の経営悪化で注目高まる…施設を非保有

文=佐藤信之/交通評論家、亜細亜大学講師
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JR北海道の車両『スーパー北斗9号』(「Wikipedia」より/DAJF)

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、自粛要請から非常事態宣言へと事態は進展した。すでに非常事態宣言は解除されたが、海外からのインバウント旅行者がほぼゼロにまで減少、リモートワーク(テレワーク)により通勤客は半減し、出張を含めた国内旅行者は、県境を越える移動の自粛により、一時9割減という惨憺たる状況にまで陥った。その後も感染拡大の防止のために公共交通の利用を控えることが趨勢であり、今後どのように旅客が回復するのかまったく見通せない。

 公共交通は、航空、バス、フェリー、鉄道と、押しなべて旅客収入の大幅な減収で手持ち資金が不足し、現に高速バスなどで運行を停止したものが現れており、経営破綻に陥る会社が出てもおかしくない状況である。JR東日本は、社債の発行などで巨額の資金を市中で調達しているが、中小零細の地方私鉄では、普段からなかなか金融機関から融資を受けられない現実があり、今後の経営も見通せない状況では、資金手当ては極めて厳しい。国や自治体の支援なしにはこの難局を切り抜けることは難しいであろう。

 そのなかで話題に上がっているのが、上下分離である。

 JR北海道が、利用率の低い路線のなかでも、引き続き経営を維持することが難しい路線を提示し、路線の廃止を前提とするものと、地元負担により維持する路線・区間について協議が行われてきた。今のところ、石勝線夕張支線と札沼線の末端区間が廃止され、台風被害などにより長期間運休している日高線は、一部区間を除いて廃止されてバス転換することがほぼ決まった。

 その利用の少ない不採算路線について、JR北海道が考えていたのが、自治体が線路施設を保有し、JRが列車を運行する上下分離である。国が、地方のローカル私鉄の経営を維持するために、鉄道事業構造再構築の制度を設けているが、その中心となるのが鉄道施設を沿線の市町村が保有し維持する上下分離である。自治体が鉄道施設や土地、車両を有償で取得する場合には、自治体に対して交付税措置が講じられることになっている。上下分離がなされると、自治体は線路施設や車両に対する修繕費を負担し続けることになる。また、ローカル私鉄にとって固定資産税が負担となっているが、土地が自治体のものになれば課税の対象から外れる。ローカル私鉄は、運行に対する直接経費だけを賄えば良いということになる。

 ただ、自治体にとっては負担が増えるということになり、その金額が大きくなりかねない。地方の私鉄には老朽化した鉄橋やトンネル、車両を使い続けているものが多い。そのような大規模な施設の更新が必要となる場合には、沿線の市町村では負担できない金額となる可能性がある。国による財政支援も拡充されてきているが、全体の金額が大きいために事業者負担額も大きく、支払い能力を超えるようなケースも想定される。一層の公共による支援が求められ、その場合上下分離が有効な手段となるのである。また、近年異常気象によって大きな自然災害が続いている。地震や台風で線路に被害があると、復旧のための費用の負担額と復旧後の路線の収益性を勘案して、そのまま廃止という判断を下さなければならない路線も見られる。たとえば、JR九州の日田彦山線の末端区間である。

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