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飲食業界・断トツ首位のゼンショー、“リッチ企業”の全貌…海外M&Aで世界進出加速

文=編集部
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すき家の店舗(「Wikipedia」より)

 外食大手のコロワイドによる定食チェーン、大戸屋ホールディングス(HD)に対する敵対的TOB(株式公開買い付け)が成功した。外食はコロナ禍で夜間営業の制限に追い込まれ、壊滅的な打撃を被った。店舗の閉鎖、事業の縮小・売却に動く事例が相次いだ。

 コロナ禍に伴う企業業績の悪化はTOBの買収コストを引き下げる方向に働く。コロワイドは居酒屋の甘太郎や焼肉チェーンの牛角など夜間営業が中心。昼間の営業が主体の大戸屋を取り込むため、敵対的TOBを仕掛けた。日本カストディ銀行を引受先とする議決権のない優先株を発行し、90億円の軍資金を調達した。同行は今年7月、日本トラスティ・サービス信託銀行が資産管理サービス信託銀行を吸収合併し商号変更した資産管理専門銀行だ。

 外食のように厳しさを増している業界では、買収によって事業を拡大する絶好のチャンスが訪れた。敵対的TOBが再編の手段として広がる可能性が高い。

 M&A(合併・買収)の決め手になるのは、なんといっても資金力だ。牛丼の「すき家」などを運営する外食大手、ゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長兼社長がコロワイドに続くTOBの仕掛け人として注目されている。ゼンショーは毎年のようにM&Aを重ね、売上高は断トツの首位だ。

 海外出店でもゼンショーの積極姿勢が目立つ。2018年11月、米国の持ち帰りすしチェーンを約288億円で買収した。買収したアドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)は米国で外食企業を一から立ち上げて成功したとして有名な石井龍二氏がオーナーだった企業。米国を中心にカナダやオーストラリアに4000店超あるFC中心の持ち帰りすし専門店。ゼンショーとしては過去最大のM&Aとなった。

 ゼンショーはアジアや南米を中心に傘下の牛丼店「すき家」を展開しているが、北米には店舗を持っていなかった。米国では宅配サービスの普及に合わせ、総菜などを自宅で食べる「中食」需要が急拡大している。持ち帰り専業のAFCを傘下に組み入れ、海外での中食ビジネスの確立を急ぐ。買収後、500店を出店した。

 19年5月にはマレーシアの飲食店チェーン「ザ・チキン・ライス・ショップ(TCRS)」を持つ現地企業を買収した。取得額は数10億円程度とみられている。買収したTCRSレストランズはマレーシアのショッピングセンターに約100店を出店している。イスラム教の戒律に沿った商品であることを示す「ハラル認証」を取得しており、イスラム教徒が大半を占めるマレーシアで親しまれている。

厳しい国内市場

 ゼンショーはスーパーや介護事業など多角化を進めてきた。海外チェーンの買収に踏み切った背景には国内の外食産業を取り巻く厳しい経営環境がある。日本では、良い立地の出店の余地が狭まるなか、人件費が高騰している。海外に活路を見出すしかなかったのかもしれない。

 ゼンショーはM&Aの軍資金は豊富だ。昨年3月、300億円の劣後特約付きローンを日本政策投資銀行と横浜銀行から借り入れた。劣後ローンは借入額の50%を自己資本と認められるため、借り入れによる財務悪化を軽減する効果がある。米国の持ち帰りすしチェーンの買収で借り入れた資金の返済に充てた。18年にも劣後ローンで300億円、普通社債で150億円を調達している。

 ゼンショーは、苦境に陥った外食企業の中で、数少ないM&Aに乗り出せる“リッチ企業”だ。小川賢太郎会長兼社長が、どんな手を繰り出すのか。外食業界は固唾を呑んで見守っている。

 M&Aには人材不足に対応するという隠れ狙いもある。マネジメントを担う店長クラスからパートまで絶対数が足りない。外国人労働者がコロナで入国できなくなっていることが、人材不足を加速している。

(文=編集部)

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