カインズだけがホームセンター業界内で「7200品・恒久的値下げ」を実現できる秘密の画像1
カインズの店舗(「Wikipedia」より)

 2019年度決算の売上高でホームセンター業界1位に躍り出た「カインズ」。コロナ禍以降も業績好調で波に乗っているカインズが、9月初旬から約7200品もの商品を、セール価格などではなく恒久的な値下げに踏み切っており、注目を集めている。

 この好調下で値下げをするということは、カインズにはいったいどういった意図があるのだろうか。経済ジャーナリストの寺尾淳氏に解説してもらった。

増えた新規顧客を常連顧客にするための値下げ施策

 なぜカインズはこの売上好調時に商品の値下げという戦略を打ち出したのか。

「マーケティング用語で“常連顧客”のことを“ロイヤルカスタマー”と呼びますが、カインズはコロナ禍で増えた新規顧客をロイヤルカスタマーとして引き込むために、値下げという手段を取ったのでしょう。

 そもそもカインズだけでなく、ホームセンター業界全体がコロナ禍で好況となっています。コロナ禍で休業せざるを得なかった業種が数多くあるなか、生活必需品を売っているホームセンターは、東京都が休業要請した業種に入っていませんでした。さまざまな業種が休業しており、顧客の立場からするといつも商品を買っている店舗が閉まっているため、ホームセンターに行ってみようと考えた方が多かったのではないでしょうか。つまり、今までホームセンターに行ったことがなかったり、あまり行く習慣のなかったりした方々の来店機会が増えたことが、ホームセンター各社が新規顧客の取り込みに成功した要因だと思います。

 そして業界1位のカインズは攻めの戦略として、約7200点もの商品の値下げを行うことで、またカインズに行きたいと思ってもらい、新規顧客をロイヤルカスタマー化しようと考えているのでしょう。値下げをすれば当面の利益が下がってしまう可能性は高いですが、長期的な安定につなげていくため、目先の利益減少は覚悟のうえでの戦略のはずです」(寺尾氏)

 カインズは新規顧客にリピートしてもらい、純増した顧客数をキープするために値下げに踏み切ったと考えられるが、これが引き金となって業界全体で値下げ競争が始まるということは考えられるのだろうか。

「私は、その可能性は極めて低いと考えています。というのも、競合のホームセンター各社はカインズに比べると利益率が悪い会社が多く、値下げに踏み込める財務の余裕があまりないように感じられるからです。ですから、業界全体がコロナによる影響で売上を伸ばしているさなかではあるものの、競合他社はカインズの真似をしようとしてもできないというのが実態ではないでしょうか」(寺尾氏)

 カインズの値下げ施策には、独走態勢の地盤を固めるべく、さらに競合他社を突き放そうという意図もあるのかもしれない。