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島忠、隠れた高収益企業を支える“反・拡大路線”経営…絶えず持続的成長の秘密

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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島忠大宮本店(「Wikipedia」より)

 国内株式市場で、家具販売やホームセンター事業を運営する島忠に絡むM&A(合併・買収)の行方が注目されている。10月2日、ホームセンター業界第2位のDCMホールディングスが島忠にTOB(株式公開買付け)を掛け、両社が経営統合することに合意したと発表された。その後、家具大手のニトリホールディングスも島忠の買収を目指していると報じられた。

 注目されるのは、島忠がM&Aのターゲットとなる理由だ。島忠の経営陣は長期的な経営の持続性への危機感から、DCMとの対等な経営統合を選んだとみられる。コロナショックが発生するまで、島忠は東京一極集中を追い風にしてきた。しかし、コロナショックによって、同社を取り巻く事業環境は大きく変化している。

 その変化への対応が、島忠がDCMとの経営統合を目指す理由の一つだろう。統合後も島忠はDCMとの対等な関係を保ち、店舗運営をはじめとする自社の強みを磨きたいはずだ。対等な関係を維持する統合がどのように進み、その結果として両社にとってウィン・ウィンの成果が実現するか否かは、他の日本企業のM&A案件にも大きな影響を与えるだろう。また、島忠とのM&Aに興味を示したニトリの動向にも注目が集まる。

首都圏に集中して店舗を運営した島忠

 島忠の特徴は、日本経済の“東京一極集中”にうまく対応してきたことだ。バブル崩壊後、より良い所得・雇用機会を求めて多くの人が、大企業が拠点を置く東京での就業を目指した。それによって、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の首都圏に人口が集中した。

 島忠が店舗の全国展開などの拡大路線ではなく、首都圏を地盤とした地域密着型の店舗戦略を重視したのは、そうした需要を確実に取り込むためだった。それに加えて、島忠は店舗の魅力を高めようと新しい発想の実現に取り組んだ。具体的に、同社は家具、ホームセンター事業に加え、食料品や衣料品など分野の異なる事業を加えた店舗戦略を強化した。島忠の店舗運営は幅広い世代から支持され、過去数年間、既存店の客数が増加基調だ。異業種混合体としての店舗運営は島忠の強みの一つだ。

 拡大路線を重視しなかった結果、同社は獲得した収益を基本的には内部に留保した。そのため2020年8月期の自己資本比率は76.5%と高い。また、島忠は自社株買いや配当の引き上げによって株主への価値還元を行いつつ、DEレシオの上昇を防ぐなど財務内容の安定を重視した。

 コロナショックの発生は、事業戦略と財務面での島忠の強みを確認する機会になった。2020年2月から8月まで、島忠の既存店舗での客数は前年同月比10~20%台の増加を記録した。それは、日用品からDIY、食料品など幅広い品目を扱う同社の店舗が人々から必要とされたことを示している。コロナ禍における新しい生活への対応という点において、島忠の競争ポジションは国内ホームセンター業界の中でも比較的優位と考えることもできる。

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