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ワタミから「和民」が消える…外食各社、ウーバーイーツ専門“ゴーストレストラン”拡大

文=編集部
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和民の店舗(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルスの感染拡大で一変した生活様式に対応しようと、外食企業が新たな展開を急いでいる。

ワタミ、「焼肉の和民」に業態転換

 居酒屋大手のワタミは10月5日、居酒屋全店の3割にあたる120店を「焼肉の和民」に転換すると発表した。かつての主力だった「和民」の全店も対象。1号店を大鳥居駅前(東京・大田)にオープンした。2022年3月までに「鳥メロ」や「ミライザカ」といった、現在の主力の居酒屋330店のうち120店を焼肉店に替える。自社開発したブランド牛「和民和牛」や希少部位を使った「ワタミカルビ」(税別390円)など140品目をそろえ、家族連れや帰宅途中の会社員を呼び込む。

 ワタミは5月16日、焼肉食べ放題の「かみむら牧場」第1号店「京急蒲田第一京浜側道店」を大田区蒲田に出店した。6月23日には大阪府守口市に関西第1号店をオープン。年内に台湾・台北市とベトナム・ホーチミン市に出店する。

 ワタミがカミチクホールディングス(鹿児島市、非上場)と設立した合弁会社ワタミカミチクが、かみむら牧場の運営にあたる。こちらはロードサイド店という位置づけ。駅近での展開となる「焼肉の和民」とは異なる。「焼肉の和民」は120店舗としているが、全店で転換が完了した後は、フランチャイズ展開し、5年間で400店舗を目指す。

 渡邉美樹・ワタミ会長兼グループCEOは「焼肉業態の売り上げは外食産業全体の平均を上回っている。焼肉がアフターコロナ時代の外食の中心になる」とみている。ワタミの20年4~6月期の売上高は前年同期比44%減の127億円、最終損益は45億円の赤字。主力の居酒屋など国内の外食事業の売り上げは81%減の21億円に落ち込み、損失は33億円に膨らんだ。

 今後回復しても、客足は7割程度にしか戻らないと判断。焼肉店への転換を決断した。かつて「居酒屋新御三家」と呼ばれた「和民」の看板を掲げる店は消える。

サイゼリヤは「ミラノ食堂」を開業

 低価格のイタリアンレストランのサイゼリヤは11月2日、東京・中央区に「ミラノ食堂」を開業した。広さは通常の「サイゼリヤ」の約半分程度に抑えた小型店だ。同社の人気メニュー「ミラノ風ドリア」を中心にパスタなど20品目を扱う。価格は500~800円だ。

 厨房設備や従業員を減らす一方、宅配や持ち帰りに特化することで既存店と同程度の売り上げを想定している。「ミラノ食堂」を多店舗化の新しい柱に育てたい考え。21年夏までに10店舗を出す計画だ。

 サイゼリヤの20年8月期通期の売上高は前期比19%減の1268億円、最終損益は34億円の赤字(前年同期は49億円の黒字)だった。新型コロナウイルスの影響は長期化するとみており、賃料などが安くすむ小型店に注力する。

ロイヤルHD、宅配・持ち帰りで勝負

 レストラン大手、ロイヤルホールディングス(HD)は8月31日、グループの大人気のメニューが宅配と持ち帰りできる専門店「ロイヤルミライダイニング」を始めた。グループで企業や医療関連施設の飲食店を受託しているロイヤルコントラクトサービスが運営する「文京グリーンコート」(東京・文京)内の職域食堂を一部改修した。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」のハンバーグやオムライス、天丼店「てんや」の天丼弁当など28品と家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」19品を揃えた。

 受託する社員食堂の厨房やグループのホテルの設備を活用し、全国で10店舗を展開する。将来的には店舗を持たず、調理のみを行うオンラインデリバリーに特化したクラウドキッチンの展開を視野に入れている。

 ロイヤルHDの20年1~6月期連結決算は売上高が前年同期比41%減の405億円、最終損益は131億円の赤字(前年同期は7億円の黒字)を計上した。主力の「ロイヤルホスト」の売り上げの前年割れが続いているほか、創業事業である機内食事業が国際線の旅行客の激減で低迷した。

 12月1日から外食やホテル事業などグループ内各社の50歳以上64歳以下の正社員200人程度の希望退職を募る。コロナ禍で外食産業でのリストラが相次いでいるが、ロイヤルHDの希望退職の募集人数は最大規模となる。

吉野家は宅配、三光マーケティングフーズは唐揚げ

 吉野家も牛丼の宅配専門店を始めた。都内・世田谷区の個人飲食店跡地を調理拠点とする。今年度中に宅配専門店のモデルを確立し、来年度に全国で本格展開を目指す。宅配専門店の出店費用が通常の店に比べて8割安く、接客従業員は不要。運営費用も3割で済む。宅配は人件費や家賃を大幅に削減できるため、多くの外食企業が進出した。ウーバーイーツや出前館など料理宅配業者に配送を委託できることもあって急速に広がった。

 居酒屋「金の蔵」などを運営する三光マーケティングフーズはウーバーイーツ限定のゴーストレストラン「東京から揚げ専門店 あげたて」のフランチャイズに加盟し、唐揚げ専門店を始めた。宅配専門店は店に客を迎えないことから「ゴーストレストラン」と呼ばれる。

 居酒屋「磯丸水産」や「鳥良」などを展開するSFPホールディングスは、うなぎ専門のゴーストレストラン「うなぎのうな政」を立ち上げた。88店舗の厨房を活用し、うなぎのかば焼きの宅配を始めている。

 外食企業は損益分岐点が高く、少しでも収入を増やそうと試行錯誤を続けている。今後、成功事例がいくつ出るかに関心が集まる。一つ成功すると、各社ともそこに集中する。良質の肉を調達できるルートを確保すれば成功し、材料費を抑えることが可能といわれている焼肉店についてはすでにこの傾向が顕著だ。

(文=編集部)

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