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大戸屋は大塚家具や一澤帆布の“二の舞”になるのか?企業の“お家騒動”が繰り返される理由

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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大戸屋の南池袋店(「Wikipedia」より)

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 10月6日に放送された『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)で、コロワイドによる大戸屋買収の舞台裏が放送されました。その結果、経営陣と創業家の確執に衝撃を受けた人も多かったようです。

 しかし、こういった買収劇は、ブランディング視点から見ると珍しいことではありません。数年前に世間を騒がせた大塚家具や京都の一澤帆布のお家騒動と基本的な原因は同じで、いずれも「理念継承」や「社内浸透」がうまくいかなかったために起きたものです。

 そこで今回は、ブランディング視点で見る企業買収について、「理念継承」「社内浸透」の大切さをお伝えしましょう。

大塚家具に見る理念承継の失敗

「理念継承」や「社内浸透」という言葉を、耳にしたことがない人もいるでしょう。読んで字のごとく、「理念継承」は創業時に掲げた理念を次の世代にきちんと伝えることで、「社内浸透」はその理念を社内全体に行き渡らせることをいいます。

 一見、簡単なことのように思えますが、これが意外と難しくてやっかいな代物なのです。大塚家具を例にしてみましょう。

 大塚家具は、もともと桐箪笥などのいわゆる高級家具を扱っていました。そして、会員制による丁寧な接客営業が大きな特徴でした。会員制にした目的は、家具の価格が外部の力でねじ曲げられないように、適正な金額を保つためだったといわれています。

 職人たちが丹精込めてつくった家具を、それを求めるお客さんに適正な価格で届ける。いわば公平な橋渡し役といったところでしょう。

 2000年初頭までは、その経営方法で順調に成長していたのですが、やがてニトリやイケアなどが台頭してくると、大塚家具は一気に経営不振に陥ります。そして、創業者でもある前社長から現社長に世代交代した際に、経営方針がガラリと変わりました。

「安い・オシャレ」といった時代のニーズを読んだ上での経営判断だったのでしょうが、そこには創業時に掲げた企業理念は消えていました。安さを訴える戦略に変更した結果、大塚家具は低迷期に突入し、2019年にヤマダ電機の傘下に入りました。そして、赤字経営が続いた結果、現社長は12月1日付で辞任することが発表されました。

 もし、前社長から現社長へ代替わりするときに「職人たちが丹精込めてつくった家具を、それを求めるお客さんに適正な価格で届ける」という信念をきちんと伝えていれば、あの“親娘バトル”は発生していなかったと思います。

 そして、市場のニーズに合わせた低価格に逃げることなく、違った営業戦略を打ち出せていたのではないでしょうか? また、ヤマダ電機の傘下に入らなくてもよかったのではないでしょうか?

 前社長と現社長の両者の考えのどちらかが間違っていて、どちらかが正しいというわけではありません。「理念継承」がきちんとされていなかったために起きた悲劇なのだと思います。

大戸屋のお家騒動の発端

 話を大戸屋に戻しましょう。

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