安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前夜に東京都内のホテルで開催した夕食会(通称:前夜祭)の費用補填問題は、急転直下の事態を迎えつつある。東京地検特捜部は3日、安倍氏本人の任意の事情聴取を同氏側に要請したのだ。安倍氏は同日、報道陣に対し、衆議院議員会館内の自身の事務所前で「(特捜の要請は)聞いていない」と否定。だが特捜部による政治資金規正法違反(不記載)の疑いで公設第1秘書の立件は間違いない情勢だ。
前夜祭は2013~19年、政治団体「安倍晋三後援会」主催で東京都千代田区のニューオータニで開催され、地元支援者らが1人5000円の会費で参加していた。特捜の捜査によると、費用は5000円の会費では足りず、この5年間に計約900万円を安倍氏側が補填した疑いが出ている。安倍氏はこれまで補填の事実を否定。ホテル側から見積書や明細書の発行もなかったと主張していた。ことここに至って、政界や報道陣から改めて白眼視されている人物がいる。かねてから、前夜祭問題を「些事」「違法性はない」として主張し続けていた元時事通信特別解説委員で政治ジャーナリスト・田崎史郎氏だ。
昨年の田崎氏「食事は参加者の半分しか出ないから補填はない」
テレビ局社会部記者は「野党議員や検察関係者に話を聞きに行った際、『あれ? おたくのチャンネルに出ていた田崎さんは以前なんて言っていましたっけ?』と嫌味を言われました」とぼやく。
田崎氏による一連の安倍氏擁護発言で最も注目を集めたのは昨年11月、前夜祭に寿司がでたのかどうかをめぐる発言だった。11月14日放送の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、野党議員が会費5000円では賄いきれない高級店「久兵衛」の寿司が出ていたことを追求していることを番組が紹介したところ、田崎氏は次のように発言したのだった。
「聞いてみますと、立食パーティーなんですね。テーブルがいくつかあって、その中に寿司があったかもしれない。ですけれども850人の方々全員に久兵衛の寿司を出しているわけではない。実際にこういう時の食事を出すのは、850人集まっても人数の半分くらしか食事をだしていないんですって。だから、ニューオータニも損をしない。領収書はニューオータニから参加された方に切られている。そこには法的な問題は生じないっていうことなんですよね」
先月の田崎氏「秘書のせいにせず、総理がけじめをつけないと」
いったい田崎氏は、誰に何を聞いたのだろう。結局、特捜の捜査で、寿司の値段がどうだったのかにかかわらず、前夜祭の費用は会費5000円では賄いきれないものであったことが明らかになった。そして安倍氏が国会でたびたび「補填はしていない」と答弁をし続けていたことに批判が集まり始まるや否や、田崎氏は11月25日放送の『ひるおび!』(TBS系)で突如として次のように弁明を始めた。
「安倍前総理が知らなかったとしても、国会に対する責任は問われることになります。(安倍氏の首相時代の国会答弁について)これは大きな問題ですよ。
もし報道通りであれば、国会で総理が当時言われたことが間違いだったということになるので、何らかの形で安倍総理がきちんと話されて、おわびもしなきゃいけなくなるんじゃないかなと思います。安倍総理と秘書のやりとりは我々にはまったくわかりませんよね。でも、それを秘書のせいにしてはいけないんだと思います。国会で答弁されたのは安倍総理ご本人ですから。きちんとけじめはつけなきゃいけないと思います」
全国紙社会部記者は話す。
「有識者として田崎史郎さんにコメント取材をしたことがあり、以前は敬意を持っていました。しかしここ最近の一連の言動の軽さは、正直、がっかりです。『結局、自分は知らなかった。けじめをつけるのは総理だ』というのは、ジャーナリストとしてどうなんですかね。
田崎さんが問題になっている安倍さんの後援会の代表者でもあった公設第1秘書を知らないわけはなく、取材時にやり取りがゼロだったとは思えません。一連の田崎さんの擁護発言は、どこから発せられたものだったのかということです。ネタ元が安倍さんご本人にせよ、首相秘書官だったにせよ、結果として国民に誤った情報を流し続けてきた可能性が高いわけですから、『知らなかった』『報道が確かだとすると』なんて言わずに、ご自身でちゃんと取材をして真実を明らかにされれば良いのではないでしょうか」
仮に安倍氏の違法性が立証された時、田崎氏は何を話すのだろうか。
(文=編集部)