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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

ブームの兆しの「シリカ水」、買う必要ある?美容・健康効果は不明瞭、水素水の二の舞懸念

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
ブームの兆しの「シリカ水」、買う必要ある?美容・健康効果は不明瞭、水素水の二の舞懸念の画像1
「Getty Images」より

 かつて、「水素の還元作用で、美容にも健康にも効果がある」として話題になった「水素水」を覚えているだろうか。芸能人や著名人、モデル等が広告塔となり、マルチ商法も多く出現し、国民生活センターが調査に乗り出した。その結果、健康効果の表示が違法であることや、含まれる水素が表示よりも低濃度であることなどが判明し、水素水ブームは一気に下火となった。

 こうした一連の騒動が過ぎ去ったなかで現れた「シリカ水」が、SNSやインターネット上で著名人や芸能人による販売プロモーションを繰り広げ、次なるブームの兆しを見せている。

 医療に携わる者からすれば、シリカ水がなぜ消費者の心を掴むのか不思議である。シリカ水のシリカは「シリカゲル」のシリカと同じであり、その正体は二酸化ケイ素、化学式は「SiO2」で表されるシリコン化合物である。シリカには結晶質と非晶質があり、食品添加物や顔料、健康食品、飲料水として使用されているシリカは非晶質である。

 日本の水はシリカが多い特徴があり、火山系のある地域の水源ほど高い傾向にあり、地域によって濃度に差はあるものの、水道水にもシリカが含まれる。過去の研究において、結晶質シリカには毒性があることが報告されているが、非晶質シリカには毒性が報告されておらず、水道水ではシリカの基準が設けられていない。

 シリカは多くの食品にも含まれ、玄米や小麦、じゃが芋やゴボウなどの根菜などに多く含まれるほか、海藻や乳製品にも含まれる。我々は、意識せずとも日々の食事からシリカを摂取しており、あえてシリカ水を飲む必要があるのかは不明だ。シリカ水を販売する業者のHPなどでは、「1日に必須なシリカ量は10~40㎎」などと謳っているが、実際にはそういった基準は定められていない。

 シリカ水を販売する業者は、その健康効果について「体を構成している成分」「骨や関節の健康維持」「美容に良い」などとSNSなどで広く発信しているが、エビデンスは弱い。予防医療研究協会理事長で麹町皮ふ科形成外科クリニック院長の苅部淳医師は、次のように話す。

「『ケイ素は体の中でつくることができないから摂取しよう』と言われますが、実際のところ、シリカをどのぐらいの量を摂れば美容によいかという研究や論文は、ほぼありません」

“体を構成している成分”という表現には、多くの人が必要と思わされそうだが、実際に必要不可欠な成分なのだろうか。

「シリカが骨や髪の形成に重要なミネラルであるのは事実ですが、厚生労働省が発表している『必須ミネラル』の項目には入っていません。つまり、必要かどうかもわかっておらず、十分な量は摂れていると考えられます。主要ミネラルはカルシウム・リン・カリウム・硫黄・塩素・ナトリウム・マグネシウムで、微量ミネラルは鉄・亜鉛・銅・マンガン・クロム・ヨウ素・セレン・モリブデン・コバルトです」

 SNSでは、あたかもシリカ水に素晴らしい健康効果があるという印象を与える芸能人の感想や体験が発信され、シリカ水ブームの起爆剤となっている。その流れは、水素水ブームと非常に酷似している。水素水は、医薬品医療機器等法や健康増進法や景品表示法に抵触する可能性を指摘され、信頼を失うことになった。シリカ水が水素水の二の舞とならないことを願う。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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