ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 菅政権、選挙連敗で窮地→逆切れも
NEW

菅政権、選挙連敗で窮地→逆切れの恐れも…自民議員の傍若無人&コロナ無策で国民が嫌気

文=林克明/ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, , ,
菅政権、選挙連敗で窮地→逆切れの恐れも…自民議員の傍若無人&コロナ無策で国民が嫌気の画像1
「首相官邸HP」より

 自民党が追い詰められている。4月25日に行われた3つの国政選挙で全敗した。遡れば、河井克行元法務大臣と妻・河井案里元参議院議員の選挙買収問題、菅義偉首相の長男・正剛氏が関与した総務省幹部接待事件、国民に自粛を半ば強要している最中に自民党3議員が銀座クラブ通い……など、不祥事の数々。加えて、新型コロナウイルスに対する無策。

 こうしたなか地方議会選や首長選挙で自民党が推す候補の落選が相次いでいたところ、今回の国政選挙全敗(北海道二区は不戦敗)で、自民党への逆風に拍車がかかった。これについて、今年10月までに実施される衆議院総選挙に向けて明るい材料だと、一部の野党支持者やリベラル派は安心しているが、追い詰められた権力者たちほど何をやらかすかわからない。

 つまり、自民党政府による“ちゃぶ台返し”の恐れがある。ゲームに負けそうになった我儘なお坊ちゃまが、ゲーム盤そのものをひっくり返しはしないかという心配である。そこで、古今東西の権力者によるちゃぶ台返しの歴史を振り返り、心構えをしておきたいと考えた。

千葉県知事選で100万票差大敗北、北九州市議選で6人落選

 今年に入って自民・公明両党の推薦候補が負けた選挙を振り返ってみよう。

・1月17日…沖縄県宮古市長選、自民公明が推す現職敗北

・1月24日…山形県知事選、自民推薦の候補がダブルスコアで敗北

・1月31日…北九州市議選、自民現職候補22人中6人が落選

      千代田区長選挙、自民公明推薦の元区議が敗北

      鹿児島西之表市長選挙、自民推薦候補が敗北

・3月21日…千葉県知事選、自民党本部推薦の候補が100万票差で敗北

      千葉市長選、元自民党市議が敗北

・4月4日…東京都小平市長選、自民公明推薦の新顔が敗北

・4月11日…東京都日の出町長選、自民公明推薦候補が落選

      兵庫県宝塚市長選、自民推薦候補が大敗

・4月25日…衆院北海道二区補選、自民は公認・推薦候補立てられず不戦敗

      参院長野補選、自民候補敗北

      参院広島選挙区再選挙、自民新人が敗北

 知事選でダブルスコアや100万票差での大敗北もあり、4月25日実施の衆院補選北海道二区では公認・推薦の候補者すら立てられなかった。

銀座クラブで飲食の自民議員

 このような結果を生んだ背景には、政府や自民党関係者の常軌を逸する行動がある。わかりやすいのは「銀座クラブ事件」である。

 新型コロナの感染拡大を受けて2回目の緊急事態宣言が発出されていたなか、判明しているだけで3人の自民党国会議員、1人の公明党議員が銀座のクラブで飲食していた。コロナ不況で仕事を失い自殺者も出ているなかで、まさに“上級国民”はやりたい放題だ。

 1月18日夜、自民党の松本純・元国家公安委員長がイタリア料理店と銀座クラブ2軒をハシゴしていたことが、1月28日発売『週刊新潮』(新潮社)の報道により発覚。このとき、自民党の田野瀬太道(たのせ・たいどう)前文科副大臣、同じく自民党の大塚高司(おおつか・たかし)元国土交通副大臣が同席していた。しかも松本氏は当初、田野瀬・大塚両氏が同席していたことを隠し、虚偽の弁明をしていた。

 1月22日、公明党の遠山清彦・前財務副大臣が銀座高級クラブで知人と会食していたことが、1月26日付「文春オンライン」の報道により明らかになった。遠山氏は議員辞職したが、松本・田野瀬・大塚の三氏は自民党を離党したものの議員辞職はしていない。つまり、党に対しては謝罪を行動で示し、国民・有権者にはけじめをつけていないのだ。

首相長男・菅正剛氏らの総務省幹部接待

 さらに、総務省幹部接待疑惑も2月4日発売『週刊文春』で暴露され、大問題となった。衛星放送などを運営する東北新社に勤務する菅義偉首相の長男・菅正剛(すが・せいごう)氏らが、総務省の幹部を接待していた事件である。

 許認可権を持つ総務省幹部を接待し、高級料理店の代金を支払うばかりか、タクシーチケットや高価な手土産も渡していた。

 また、衛星放送などの許認可にかかる情報流通行政局の秋元芳徳局長は、東北新社子会社社長に接待された際、東北新社の事業について話題に上がった記憶はございません」と2月10日の衆院予算委員会で述べたほか、複数回にわたり虚偽答弁している。 

 この問題に関しては、数々の不祥事が噴出しているが、明らかに行政が歪められた可能性が高く、国家公務員倫理法に触れる可能性が濃厚だ。総務省審議官時代に高額接待を受けていた山田真貴子内閣広報官が退任したほか、処分が発表されたが、問題は解決していない。

元法務大臣・河井克行夫妻による大規模買収事件

 極め付きは、元法務大臣夫妻による選挙買収事件だ。2019年7月21日の参議員選挙で、元法務大臣の妻で河井案里元議員が広島選挙区で当選。その際に、夫婦が共謀して地元自民系議員らをはじめ広範囲に金を渡していた。

 自民党本部から、自民系の対立候補・溝手顕正氏陣営に1500万円の選挙資金が出されたのに対し、案里氏には10倍の1億5000万円が提供されていた。そして、安倍晋三前首相と菅義偉首相は案里氏を応援していた。

 夫妻は逮捕され、案里氏は今年1月21日に東京地裁で懲役1年4カ月・執行猶予5年の判決が言い渡され、翌月に議員辞職した。克行氏は3月3日に保釈され、同月中に議員辞職願を提出し、4月1日に衆院本会議で辞職が認可された。

 そして4月25日に行われた再選挙で、自民党推薦候補が敗北した。

自民党絶対得票率16.7%という事実

 そもそも、「森友疑獄」「加計疑獄」「桜を見る会疑獄」と、安倍政権時代からの汚職・不祥事はなんら解決されていない。今挙げたような腐敗や、庶民には自粛を求めながら自民党議員ら“上級国民”が銀座クラブで飲食などをしていることが発覚しても、まともに責任を取っていないのだ。

 コロナ対策の不備なども含め、自民党関係者の腐敗・失政・特権性に基づく傍若無人ぶりを見れば、年明けからの地方選で自民党系候補の敗北が目立つのは自然だろう。

 この間の国政選挙の結果をみても、同じようなことがいえる。2012年に第二次安倍内閣が成立して以降、これまでに2回の衆議院選挙と3回の参院選挙が行われた。その推移を再確認してみたい。

 全有権者のうち何%が自民党に投票したか示す“絶対得票率”を見よう。左側の数値が比例代表選挙で、( )内が選挙区。

・2013年参院選、17.7%(21.8%)

・2014年衆院選、17.0%(24.5%)

・2016年参院選、18.9%(21.8%)

・2017年衆院選、17.5%(25.0%)

・2019年参院選、16.7%(18.9%)

 特に直近(安倍政権最後)の参院選の絶対得票率は、選挙区で初めて2割を割った。比例区でも最低である。

 これに加えて、前述したような上級国民の傍若無人ぶりが明らかになったことから、次の総選挙で自民党が大敗北して新しい時代が到来することを期待する向きもある。だが、追い詰められた自民党政府の“逆切れ”もしくは“ちゃぶ台返し”もあるのではないか。

 国民から批判されて自分の意見が通らなくなった権力者による“ちゃぶ台返し”を考えたとき、筆者の脳裏をよぎったのは、ヒトラーが首班指名されたときのドイツ国会議員選挙をはじめ、総選挙に負けたミャンマー軍部のクーデター、巨大市民デモに押され気味だった中国政府が弾圧政策を強めている事実である。

 古今東西の歴史から「逆切れ&ちゃぶ台返し」を学ぶことは、身を守ることにつながるはずだ。

(文=林克明/ジャーナリスト)

林克明/ジャーナリスト

林克明/ジャーナリスト

1960年長野市生まれ。業界誌記者を経て週刊現代記者。1995年1月からモスクワに移りチェチェン戦争を取材、96年12月帰国。第一作『カフカスの小さな国』で小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。『ジャーナリストの誕生』で週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。

 最新刊『ロシア・チェチェン戦争の628日~ウクライナ侵攻の原点を探る』(清談社Publico)、『増補版 プーチン政権の闇~チェチェンからウクライナへ』(高文研)
林克明ジャーナリストYou Tubeチャンネル

Twitter:@@hayashimasaaki

菅政権、選挙連敗で窮地→逆切れの恐れも…自民議員の傍若無人&コロナ無策で国民が嫌気のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!