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瀕死のタクシー業界でも売上をアップさせるドライバーの意外な仕事術…都心3区も需要激減

文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー
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「gettyimages」より

 コロナ禍で大打撃を受けた業種の一つがタクシー業界だ。居酒屋やバーの営業自粛に伴い、ほろ酔いで帰宅する人がほとんどいなくなり、割増料金となる深夜10時以降(=青タン)の客数はガタ落ち。最も単価が高くなる時間帯に客の姿がないのだから、タクシードライバーのほとんどはコロナ前と比べて収入が激減した。どの会社のトップドライバーも、異口同音に「年収600万円が400万円に落ちた」などと嘆いている。

 そんな状況だけに、営業形態を変えるドライバーも増えてきた。

都心3区を流して「赤信号では先頭に停車」

「隔勤(隔日勤務)から日勤(1日勤務)に変えたよ」――ドライバー歴13年のベテランであるA氏は、こうつぶやいた。

「コロナ前は銀座を中心に繁華街を流していたけど、今はどの街もゴーストタウンだろ。これなら日勤のほうがマシだと思ってさ。月に24日、朝8時から夜8時まで走っているよ」(A氏)

 隔勤だった今年2月の売り上げは60万円(税込み、以下同)。1日平均5万円で、社会保険や税金を引かれた手取りの月収は22万円ほどだった。コロナ前は1日平均6万5000円=手取り42万円だったというから、落ち込み方はものすごい。

「3月から日勤にしたら、1日平均3万5000円、24日勤務で月間売り上げは84万円になった。これでコロナ前の手取りに戻ったよ。今はとにかく中(=千代田区、港区、中央区)を流しまくっている。ただ、ライバルが多くて客が減り、無線も減ってきたから、赤信号で先頭に停車するなど新人時代のやり方を思い出している。昔は嫌だったワンメーター客も、今はありがたく感じるよ」(同)

 ワクチン接種の遅れもあり、コロナ前の景気に戻るのは「最低でも、あと半年かかるんじゃないか」と嘆いていた。今はとにかく辛抱の時期だという。

「うちの会社は大手だけど、台数を減らさないし、従業員の休業補償をしないんだ。こんな時期なのに、若い新人を積極的に採用している。どうやら、高齢のベテランドライバーを辞めさせたいようだね。どうせ車を与えるなら、体力もやる気もある若手に切り替えたいんじゃないかな。経営者なら当然の発想だけど、俺たちベテランの扱いがひどくなってきてる気がするね」(同)

郊外の小さな駅が“乗せ放題”に

 また、営業の方法を変えたドライバーも少なくない。東京を走るトップクラスのドライバーは、いわゆる“中”(=千代田区、港区、中央区など)で仕事をしてきた。省庁関係の役人や営業マンなどタクシーで飛び回る人が多く、また、富裕層が買い物をしたりホテルで食事や会合をするなど、タクシー需要が日本一多い地域だからである。

 しかし、コロナ禍でリモートワークが加速するとともに需要は激減。空車の台数が目に見えて増えている。

 これまで中で仕事をしてきたタクシードライバーが、次のように語ってくれた。

「特に夜がきついです。私も以前は中で仕事をしていましたが、今は時間帯によって郊外の駅付けをしています。利用客の少ない駅の場合、タクシーの台数も必然的に少なくなるのですが、今は夜10時台にタクシーが1台もおらず、乗せ放題となるタイミングがあるんです。

 先日、各駅停車しか止まらない駅で夜10時台に5人の客がタクシーを待っていました。最初の1人をワンメーターの場所まで送り届け、すぐに戻ると、2人目の客がまだ待っていました。ほかのタクシーが1台も来なかったんです。その人も近かったのですぐに戻り、結局1時間で9組の客を乗せました。1時間でこれだけ乗せたのは初めてです。近場ばかりでしたが、その1時間で7000円の売り上げノルマをクリアしました」

 多くのタクシードライバーが「あんなところに行っても……」と思う小さな駅だからこそ“独り占め”できたわけだ。

 同じ時刻、西麻布や六本木には空車が多く集まり、2時間ほど乗せられなかったと、このドライバーの同僚がこぼしていたそうだ。

「ワクチンが早く行き渡り、コロナが収まるのを待つしかありません」とこぼすこのドライバーは、景気が元に戻るまで「空車が少なく客の多い区域や、駅で仕事をする」と語っていた。

(文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー)

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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