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千葉哲幸「フードサービス最前線」

居酒屋「ランチラーメン」導入支援サービス、なぜ人気?本部が原材料一括仕入れ&配送

文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト
居酒屋「ランチラーメン」導入支援サービス、なぜ人気?本部が原材料一括仕入れ&配送の画像2
テイクユーでは2020年3月に直営店「貝出汁らぁ麺 虎武」を出店し、ステルスFCで増えていく店舗のスープのバラエティを広げた

 飲食店に時短営業が要請されるようになり、居酒屋ではオープンの時間を早めてランチに力を入れるようになってきた。そのなかで「ランチラーメン」という営業スタイルの事例が増えてきている。これはランチの時間帯にラーメン専門店としてラーメンを売るという二毛作である。

 これをプロデュースしているのが株式会社テイクユー(本社/東京都新橋、代表/大澤武)。同社は東京都内にラーメン店15店舗、居酒屋5店舗を展開しているほか、「ステルスFC」によって全国に約100店舗のラーメン店を展開している。ステルスFCとは、決められた屋号ではなくオーナーが自由に店名を決めることができ、原材料の仕入れを本部から行うといった仕組みのFCである。

 このステルスFCのノウハウを持つ同社では、このコロナ禍でランチタイムを有効活用するためのランチラーメンをプロデュースする依頼が増えるようになり、その仕組みを応用してこれらの実績を増やし続けている。

「設備投資不要」「職人不要」の仕組みをつくる

 同社がラーメン店を手掛けたのは2012年7月のこと。「鶏白湯」から始まり、「煮干し」が加わり、20年の3月に「貝出汁」の直営店「貝出汁らぁ麺 虎武」を出店した。また、ランチラーメンを導入した店が増えてきていることから、ステルスFCの各店舗とバッティングしないように、「担々麺」「二郎系」「濃厚豚骨」「博多豚骨」という具合にスープのレシピをストックするようになった。

 同社がランチラーメンのプロデュースを初めて手掛けたのは5年程前のこと、ランチ営業をしたいという居酒屋から相談を受けたことがきっかけであった。これがきっかけとなって、テイクユーでは居酒屋がランチラーメンを導入するための障壁を取り払っていった。

 その障壁とは、(1)設備投資が必要(茹で麺機など)、(2)スープを仕込みたくない(設備、レシピ、労力など)、(3)レシピや売るためのノウハウを持っていない、(4)ラーメン専門店に勝つ自信がない――という点。居酒屋としては、ランチラーメンに魅力を感じているが、失敗するリスクが心配だということだ。

 同社ではステルスFCを展開するために、ラーメン専門のメーカーに、ラーメンの麺、スープ、かえし、油のスペックをオーダーして、メーカーがこれらを一括して加盟先にデリバリーしている。店舗ではラーメン職人が不在だが、メーカーではスープを大量につくるラーメン職人が存在する。そこで、ランチラーメンを導入する店舗は、基本的にはコンロが2台あれば十分だという。

 このようなソリューションによって、ランチラーメンは「提供時間が短い」「回転率が高い」「老若男女とターゲットが広い」「客単価が950円前後と比較的に高い」というメリットをもたらした。

 居酒屋がランチラーメンを手掛けるためのポイントについて大澤氏はこう語る。

「本来の居酒屋営業とのストーリー性が重要です。例えば、鮮魚を扱う居酒屋の場合は貝出汁がふさわしい。また、小籠包を売る店で新規に担々麺を売るお手伝いもしました。このように、店にはメインの営業とランチラーメンに一貫性があります。そしてランチラーメンは専門店のクオリティと雰囲気を備えることが重要です。居酒屋のメニューにある〆のラーメンでは、ランチラーメンとして通用しない」

 このように、ランチラーメンを導入するためには、売り方に強い姿勢が求められる。

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東京・神楽坂でランチラーメンを導入している立ち飲み居酒屋の「魚匠」。ランチラーメン営業時には専用の暖簾を掛けている
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「魚匠」のランチラーメンのメニュー構成。テイクユーの貝出汁ラーメンの内容を踏襲している

女性客が定着

 ここでテイクユーのプロデュースでランチラーメンを導入している事例を紹介しよう。

 東西線・神楽坂駅から徒歩2分、出版社の新潮社の斜め向かいにある立ち飲み居酒屋「魚匠」では、この売り方を1月5日から手掛けている。導入前までは16時から22時までの営業としていたが、1月5日からは11時45分から14時までランチラーメンを営業、16時から22時まで立ち飲み営業とした。緊急事態宣言が発出されてからは、要請通りに営業している。

 同店を経営する株式会社ロスジェネ・マネジメント代表の長谷川勉氏は、これまで飲食店のコンサルタントとして活動してきて、20年7月に「魚匠」をオープンした。店舗は10坪強、立ち飲みはマックスで25人収容という規模。長谷川氏は店舗の有効活用のためにかねがねランチラーメンを導入したいと考えていたところ、同年12月にテイクユー代表の大澤氏と知り合った。ラーメンビジネスのことを話し合うにつれて意気投合、ラーメンの食材すべてをワンストップで供給するテイクユーに依頼した。

 長谷川氏はテイクユーの商品をいろいろと試食した結果、スープは貝出汁、麺は平打ち麺とした。同社料理長の笠原章太氏と研究を重ね、かえしとチャーシューの一部は同店でつくるようにして、オリジナルな貝出汁ラーメンをつくり上げた。

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「魚匠」の「特製醤油らぁめん」と味変の柚子胡椒、「貝だし炊き込みご飯」

 ランチラーメンの告知は現状SNSのみで行い、概ね1日20食以上(客単価950円)が売れている。ひとりで来店する女性客も定着してきていて、これからは販促を拡大して二毛作を定番化していくという。

 現在、テイクユーでは居酒屋からのランチラーメンの相談案件が増えてきている。さらに同社のホームページの中に「居酒屋さま向けランチラーメン特設サイト」を立ち上げて、この売り方の魅力をアピールしている。

 コロナ禍は飲食業界に「テイクアウト」「デリバリー」「ゴーストレストラン」という新しいキャッシュポイントをもたらしているが、ランチラーメンもこれらと同様の可能性を生み出している。

(文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト)

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こちらはランチラーメンではなく、テイクユーのステルスFCの事例。新宿三丁目の飲食店街に「もつ煮込み専門店 沼田」を4店舗展開している有限会社珈琲新鮮館(本社/神奈川県相模原市、代表/沼田慎一郎)は、ラーメン店営業に適している店舗である東京・新宿三丁目の「沼田はなれ」で1月16日から一時的にテイクユーのラーメン店プロデュースで「貝出汁中華そば 貝香屋」として営業。オープン当初、テイクユーの直営店である「貝出汁らぁ麺 虎武」からの花を飾り、同店との関連性があることをラーメンファンに向けてそこはかとなくアピールしていた。この話題がラーメンファンのコミュニティで瞬く間に広がり、「もつ煮込みがおいしい沼田がラーメンを始めた」ということでバズった。

千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト

千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト

フードサービス業界の経営専門誌である『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)とライバル誌両方の編集長を歴任。2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく、最新の動向もリポートする。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)。

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