コンプレックスをサッカーで克服 差別と隣り合わせだった鈴木武蔵の半生の画像1
※画像:『ムサシと武蔵』(徳間書店刊)

「おーい、ハンバーグ」
「お前だよ、お・ま・え。ハンバーグみたいな色してるの、お前だけだろ。でも、ハンバーグと言うよりウンコだな」


 欧州サッカーベルギー1部リーグ・KベールスホットVAの鈴木武蔵選手が、小学生時代に肌の色への差別から心ない言葉を投げつけられ、いじめられていたことを告白。苦悩と歓喜にゆれた半生を綴った自叙伝が『ムサシと武蔵』(鈴木武蔵著、徳間書店刊)だ。


 鈴木選手は桐生第一高校を初の全国高等学校サッカー選手権大会にみちびき、初戦でハットトリックを達成するなど、チームのベスト8進出に大きく貢献した。高校卒業後はJ1のアルビレックス新潟に加入。水戸ホーリーホック、松本山雅FC、V・ファーレン長崎、北海道コンサドーレ札幌を経て、2020年8月、ベルギー1部リーグのKベールスホットVAへ移籍。リーグ戦26試合で6ゴールをあげた。


 代表歴も華麗である。高校2年時にはU-16日本代表に選出、2019に日本代表にも初選出され、今後日本代表でも中心選手として活躍が期待されている選手だ。


 その鈴木選手は、ジャマイカ人の父と日本人の母を持つ「ハーフ」である。小学生時代は、その出自による肌の色でいじめを受けていた。生きる力になったのは、小学校2年生のときに始めたサッカーであり、チームメイトたちだったという。


 鈴木選手の、ハーフであることの認識が変わったのは、群馬県のサッカー強豪校、桐生第一高校に進んでからだったようだ。同校は、緊張と緩和がうまくミックスされた雰囲気であり、指導陣はどの選手にも平等に接してくれる、居心地のいい環境だった。


 サッカー部の先輩たちも優しく接してくれた。「どことどこのハーフ?」という中学生まではされると嫌な質問も、このときは周りとのコミュニケーションのきっかけとして利用し、比較的早くチームに溶け込むことができた。初めてサッカーのプレー以外で「ハーフでよかった」と思えたという。


 初めてU-16日本代表合宿に参加した際も、のちに日本代表でチームメイトとなる南野拓実選手(イングランドプレミアリーグ・リヴァプール所属。現在はレンタル移籍でサウサンプトンFCでプレー)が興味を抱いてくれて会話が始まり、コミュニケーションのきっかけとなった。


 幼少の頃から足が速かった。ジャマイカ人の父から受け継いだ身体能力は大きな強みである。学校生活ではうまくいかなくても、サッカーでは次第に周りの仲間たちが鈴木選手の力を認め、集団の中の「異物」と思わずに接してくれるようになった。


 「今、僕は自分が黒人ハーフであることに誇りをもっている」と鈴木選手は本書で綴っている。


 日本に来てからしばらくは「ハーフで黒人=人と違う=悪」という価値観に縛られていた。その価値観から少しずつ逃れていくことができたのは、まぎれもなくサッカーのおかげだった。


 コンプレックスをサッカーで克服してきた鈴木選手。サッカーに限らず、人それぞれ好きなことに打ち込むことで、自己認識は変わっていき、自信がつき、信頼できる仲間もできる。それは自分が囚われてきた窮屈な価値観やコンプレックス、思い込みをうちやぶるきっかけになるのだ。(T・N/新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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