明治から昭和の時代、高等教育を受けたエリートにもかかわらず、仕事をせずに読書三昧の生活を送っていた人々は「高等遊民」と呼ばれていた。
『「独学」で人生を変えた僕がいまの君に伝えたいこと』(青春出版社刊)の著者である千田琢哉氏は、大学時代に夏目漱石の小説を読んで「自分も30代で高等遊民になろう」と決意したそう。その実現のために計画を練り、実行し、習慣化して、現在は「高等」とは言わずとも、ごく平凡な「遊民」にはなれた、としている。
■好きな環境で生き、好きな働き方は「独学」でしか手に入らない
現在千田氏は、自分が想像した通りの環境で毎日熟睡し、フレッシュな頭で優雅に勉強し、暇つぶしに文章を書いたり、音声を録音したりしている。それらのコンテンツは千田氏自身から売り込まなくても商品化され、これまでの蓄積がすべて資産になり、お金がお金を生む形になっている。
すごいことのように思えるが、これからは特別なことではなくなるかもしれない。千田氏自身も、これからこのような生活スタイルを送る人が増え、高等遊民の時代が到来するとしている。
千田氏のように自分の思い描く生活スタイルで人生を過ごすために、あるいは組織に属していながらも自分にとって快適な働き方をするためには、相応の実力がなければならない。そのために大切になるのは今から勉強し、準備しておくこと。つまり「独学」だ。では、独学するにあたり、最短の時間で結果を出すためにはどうしたらいいのか。
まず必要なのは、未熟者は長所より短所を徹底的に矯正すること。もし、天才と自負しているのであれば、長所だけを伸ばせばいいが、そうでなければ短所に目を向けることが大切だ。とくに入社3年目になって致命的な短所があれば、その先苦労が予想される。この事実を正面から受容し、正式にプロとして認められるまでは、できる限り短所はゼロに近づけておいたほうがいい。
短所を矯正し、プロの下限をクリアしたら、次は長所を伸ばすことを考える。短所についてはアウトソースができるのに加え、放っておいても周囲が手伝ってくれるからだ。
ただし、プロの世界で長所を伸ばしても、同じような長所を武器に戦っているライバルがたくさん出現する。その場合は、正面から勝負するのではなく、自分が勝ちやすい土俵にずらしていくこと。このときに、長所を伸ばす過程で、短所を克服した経験が自分自身を助けてくれる。短所をマメに克服すると、それが土俵をずらしたり、変えたりするのに役立つことがある。「長所を伸ばすことだけでOK」でも「短所をなくせばOK」でもなく、これまでの経験や体験は全て有機的に繋がっていて、無駄なことはないということだろう。無意識にやった経験も意識してやった経験も、いつどこで化学反応を起こすかわからない。だからこそ、短所を潰す経験も、長所を伸ばす経験も必要なのだ。
本書は入社3年目未満の本気で成長したい若い人たちに向けて書かれた1冊。将来、自分の思い通りの働き方、生き方をするために、若いうちに何をしておけばいいのか。本書から学んでみてはどうだろう。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。